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異様に記憶に残る画風の漫画家の忘れられない短編漫画
[レビュアー] 岡ノ谷一夫(生物心理学者・東京大教授)
岡ノ谷一夫さん(生物心理学者)のポケットに3冊
〈1〉『諸星大二郎自選短篇集 幻』諸星大二郎著(ちくま文庫、1100円)
〈2〉『静かな夜はあの歌と』藤原正彦著(PHP文庫、1650円)
〈3〉『赦しへの四つの道』アーシュラ・K・ル・グィン著、小尾芙佐・他訳(ハヤカワ文庫SF、1870円)
〈1〉は、異様に記憶に残る画風の漫画家による短編選集である。中でも「涸れ川」は忘れがたい。砂漠をさまよう男が、涸(か)れた川底で干からびた女を見つける。すると雨が降り、干からびた街も人々も息を吹き返す。男はその女と子を持つが、ある風習を受け入れなかったため、次の乾期が来ると、みな去ってゆく。一度は異界に迎え入れられた男は、また砂漠をさまよう。
〈2〉は、数学者である作者が、歌や詩にまつわる記憶を綴(つづ)った随想集である。私は「花の街」が好きだ。「夏の思い出」もせつなく美しいが、そこには青春の記憶が強い。対して「花の街」は、1番、2番は美しく楽しげで、どこかシュールでもあるのに、3番で一転して深い悲しみが来る。赦(ゆる)されない何かがある。藤原はそこに戦争の爪痕を見る。
〈3〉は、「ゲド戦記」でも知られる作者によるSFアンソロジー。「裏切り」では、遠い辺境の惑星で、失脚した老人と、老犬と静かな死を待つ老女が隣り合って暮らす。老女は道ならぬ恋に落ちた若者たちを受け入れ、病む老人にも手を差し伸べる。だが、誰かを受け入れることは、別の誰かを裏切ることでもある。老女は老犬を失い、その赦しを乞う。赦しとは罪を消すことではない。取り返しのつかなさを抱えたまま、なお世界にとどまることだ。生命の連鎖は、赦しがなければ成立しない。そのことを噛(か)みしめる三冊であった。=寄稿=























