〈書評〉『サッカー報道とナショナリズム 「日本人らしい」プレーとは何か』笹生心太(ささお・しんた) 著

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サッカー報道とナショナリズム

『サッカー報道とナショナリズム』

著者
笹生 心太 [著]
出版社
青弓社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784787235749
発売日
2026/06/04
価格
3,740円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

〈書評〉『サッカー報道とナショナリズム 「日本人らしい」プレーとは何か』笹生心太(ささお・しんた) 著

[レビュアー] 佐谷眞木人(恵泉女学園大学教授)

◆国民性のステレオタイプ反映

 サッカーW杯を観ていると、サッカーとナショナリズムの強固な結びつきを実感することが多い。本書は新聞やサッカー専門誌の記事の網羅的な調査によって、両者の結びつきのあり方を実証的に研究した労作である。本書に拠(よ)れば、スポーツ報道に際して「日本人らしさ」が言及される例は圧倒的にサッカーが多く、全体の40%に達する。

 そもそも、特定のスポーツのプレースタイルに国民性が反映すると考えること自体、おかしなことではある。しかしながら、サッカーに関してはそれがごく当たり前のこととして語られてきた。日本だけではない。諸外国においても、たとえば、ドイツチームはドイツ人らしい戦いをするし、アフリカ諸国のチームにも、アフリカらしさがある。そのような言説がステレオタイプを生み、むしろ差別の温床にすらなり得る危険性を本書は指摘している。

 日本において、サッカーの「日本らしさ」への言及が急増するのは、2006年に、当時のイビチャ・オシム日本代表監督が「日本サッカーの日本化」という目標を掲げてからだという。それまで、いわば論評的に語られてきた「日本らしさ」は、このときを境としてプレーヤーが目指すべき目標となった。

 ではその「日本らしいサッカー」とは何か。本書はその内容が時代によって変化してきたと説く。古くは「身体能力に劣る日本人は、組織力によって補っている」と語られてきた。しかし、同年ごろを境として、身体の強さなどで劣るが「俊敏性」や「運動量」で補いつつ、優れた「パスワーク」をもって戦うことが得意であるという肯定的評価が多くなる。

 日本と対比されるのは主に欧米だ。欧米の個人主義に対して、日本人は組織力に優れている。本書はそのようなサッカー観が日本人論の焼き直しに過ぎないと指摘している。それは、この社会に空気のように存在している「檻(おり)」として日本人を縛っているのではないだろうか。サッカーは私たちの自画像として語られているのである。

(青弓社・3740円)

1981年生まれ。明治大専任准教授・スポーツ社会学。

◆もう1冊

『オリンピックが生み出す愛国心』石坂友司ほか編著(かもがわ出版)

中日新聞 東京新聞
2026年7月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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