『世界最先端の研究が教える新事実 疲労回復学BEST100』
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【毎日書評】平日は休んで、週末に動く。エビデンスに基づく新しい「疲労回復」習慣
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
きょうは金曜日。一週間にたまった疲れを、いままさに感じていらっしゃる方も多いかもしれません。そこでご紹介したいのが、『世界最先端の研究が教える新事実 疲労回復学BEST100』(加藤浩晃 著、総合法令出版)。
100を超えるエビデンスに基づき、睡眠、身体、脳、メンタル、食事という5つのテーマごとに、“知っていると役に立つ最先端の知見”を紹介している一冊です。
身体を休めること、適切に休養をとることについては、内容の難しさやとっつきにくさが先行してしまい、本当に知りたい人がすぐに実践できるほどかみ砕いて説明した本がまだそれほど多くありません。
本書では、世界中の最新の研究からわかってきた疲労回復の方法をイラストや図を用いるだけでなく、専門用語をなるべく一般的な説明の仕方にしたり、簡単な表現にしたりしてわかりやすく説明し、どんな方でも読み進めていただけるよう工夫しました。(「まえがき」より)
「寝不足が続くと、ジャンクフードが食べたくなる理由」「ぼんやりする時間が発想の回り道を助ける」「高カカオ食品は、脳の疲労感を和らげる可能性がある」など、思わず人に話したくなるような研究結果が集められているところも魅力のひとつ。
肩の力を抜いて無理なく読めるだけでなく、ちょっとした雑談にも活用できる手軽さが備わっています。
ちなみに著者は、監修を含め40冊以上の著作を持つ医師、経営者、ヘルスケアイノベーション研究者。つまり本書は、豊富な経験と実績に裏づけられたものでもあるわけです。
きょうは第2章「身体・エネルギー・疲労回復」のなかから、疲れをとるのに役立ちそうな2つのトピックスを抜き出してみたいと思います。
「冷水シャワー30秒」がもたらす、朝の心身のスイッチ
朝、シャワーの最後に冷たい水を浴びる、そんな習慣を聞いたことはありませんか。大規模な調査によって、冷水シャワーを30日間続けた人は、やらなかった人と比べて、病気による会社の欠勤日数が29%も少なかったということが明らかにされました。(73ページより)
この研究は、オランダのアムステルダム大学医療センターのヘールト・バイゼ博士らが2016年に発表したもの。
研究では、18歳から65歳までの健康な成人3018名を4つのグループに無作為に振り分けました。通常のシャワーの最後に冷水を①30秒浴びるグループ、②60秒浴びるグループ、③9秒浴びるグループ、そして④冷水を浴びないグループです。
これを30日間続けたあと、その後60日間は自分の判断でシャワーを継続するかどうかを選べる設計になっていたようです。主要な評価項目は、病気による欠勤日数。
すると、冷水シャワーを浴びた3つのグループは、浴びていないグループと比べて欠勤率が29%低下しました。興味深いことに、この効果は浴びる時間の長さに関係なく、ほぼ一定でした。つまり、わずか30秒の冷水シャワーで欠勤を回避できるという十分な効果が得られたのです。(74ページより)
注目したいのは、病気になった日数自体には明確な差が見られなかったこと。差が出たのは、会社を休んだ日数のほうなのです。不思議な結果ですが、これは冷水シャワーが病気を防いだということより、「症状があっても、出勤できる程度に体調管理に効果があった」、あるいは「主観的な活力感を高めた可能性」を示しているようです。
冷水を浴びると瞬間的に交感神経が強く活性化され、血管が収縮し、心拍数と呼吸が深くなります。これは「コールドショック反応」と呼ばれる生理反応で、体に短時間のストレスをかけることによって、慢性的なストレスへの耐性を高める「ホルミシス効果」が表れると考えられるのだそうです。
しかし最初から冷たい水を浴びるとなると抵抗がある人が多いと思います。温かいシャワーの最後に、30秒だけ冷水に切り替える方法がおすすめです。バイゼ博士らの研究で効果が示されたのもこのやり方です。通常の温水シャワーで一通り体を洗った後、最後に冷水を浴びる、それだけで十分です。(75ページより)
ただし、冷水を浴びることで血管に強い負担がかかるため、心臓病や高血圧、レイノー症候群のある方は、必ず主治医に相談してから始める必要があります。(73ページより)
週末に運動するだけでも効果がある
著者いわく、運動は「毎日少しずつ」が理想。とはいえ平日は忙しく、運動する時間がないという方もいらっしゃるでしょう。そうなると週末にまとめてするくらいしかできないことになりますが、「それでOK」なのだそうです。
近年の研究では、週末に集中して運動する「ウィークエンド・ウォリアー(週末の戦士)」型であっても、毎日少しずつ運動する人と同程度の健康効果が得られると明らかになっています。
これは、レスター大学(イギリス)のゲイリー・オドノヴァン博士らが2017年に発表した研究結果によって明らかにされたもの。研究では、参加者を身体活動のパターンによって次の4グループに分類したのです。
運動なし(不活発)グループ(グループA)WHOが推奨する運動量(週150分の中等度運動)未満グループ(グループB)週1〜2日間に集中して活動するウィークエンド・ウォリアーグループ(グループC)週3日以上に分散して定期的に活動するグループ(グループD)
全死亡リスクはグループBが31%、グループCは30%、グループDは35%と、グループAと比較してそれぞれ低いことが報告されました。心血管疾患による死亡リスクも、グループBは37%、グループCとグループDは41%低下していました。
つまり、グループCのように週末に集中して運動する人と、グループDのように分散して少しずつ運動する人の間で、健康効果に大きな差はなかったのです。
この結果は、その後ほかの研究でも繰り返し確認されています。(99ページより)
しかしなぜ、週末だけ集中して運動しても、分散して運動する場合と同程度の効果が得られるのでしょうか。
現時点で有力な解釈は、健康への寄与で重要なのは「総運動量」であり、週に何回に分けるかは二次的な要素ではないか、というものだといいます。できるときに、できるかたちで運動を継続すれば、健康への効果は充分に期待できるようです。(98ページより)
最初から順番に読む必要はなく、気になるテーマや、いま困っていることがらについての記述から読み進めることが可能。肩の力を抜き、週末のリラックスした時間に読むには最適です。
作家、書評家、音楽評論家
印南敦史
1962年東京都生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。「ライフハッカー・ジャパン」で書評連載を担当するようになって以降、大量の本をすばやく読む方法を発見。年間700冊以上の読書量を誇る。「東洋経済オンライン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」などのサイトでも書評を執筆するほか、「文春オンライン」「qobuz」などにもエッセイを寄稿。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社、のちにPHP文庫)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)など多数。最新刊は『現代人のための読書入門 本を読むとはどういうことか』(光文社新書)。@innamix/X
Source: 総合法令出版


























