『宝島(上)』
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『宝島(下)』
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そろそろほんとうに生きるときがきた
[レビュアー] 北村薫(作家)
名著には、印象的な一節がある。
そんな一節をテーマにあわせて書評家が紹介する『週刊新潮』の名物連載、「読書会の付箋(ふせん)」。
今回のテーマは「沖縄」です。選ばれた名著は…?
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真藤順丈の『宝島』は、単行本として刊行される前にまず雑誌一挙掲載という、この長さの物語としては、極めて異例な形で発表されました。
わたしはそのことに驚き、手に取りました。
「われらがオンちゃんは、あのアメリカに連戦連勝しつづけた英雄だった」という一行から始まり、続く「――豪傑だった」「――走っていた」と疾駆する文章が、四行目で「あの夜もそうだったよな」となる。
前置きの文章は、次の呼びかけで終わり、物語の幕が開きます。
「さあ、起(う)きらんね。そろそろほんとうに生きるときがきた――」
後は、もう語りから逃れることができませんでした。この言葉がまた現れる最後まで一気に読み通し、最も早い読者の一人になれたことを誇りに思いました。
これは、沖縄人(ウチナンチュ)の物語を、日本語の、振り仮名を使用し得るという特性を生かし見事に語った奇跡のような作品です。
圧倒的な評価を得ましたが、中でも次の宮部みゆきさんの「光に満ちた宝島」といった直木賞の選評が、大事なことを語ったものとして心に残りました。
沖縄だけでなく、全ての苦闘している人びと、圧迫されている人びと、辛い現実をかき分けながら希望を目指して前進している人びとに、「そろそろほんとうに生きるときがきた」とエールを贈る物語。



























