〈書評〉『プライベート・エクイティ 資本主義が世界を食い尽くす』ブレンダン・バルー 著

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プライベート・エクイティ資本主義が世界を食い尽くす

『プライベート・エクイティ資本主義が世界を食い尽くす』

著者
ブレンダン・バルー [著]/鈴木 正徳 [訳]
出版社
東洋経済新報社
ジャンル
社会科学/経済・財政・統計
ISBN
9784492444979
発売日
2026/08/26
価格
3,520円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

〈書評〉『プライベート・エクイティ 資本主義が世界を食い尽くす』ブレンダン・バルー 著

[レビュアー] 根井雅弘(京都大教授)

◆業務無視 転売で富築く手口

 本書は、プライベート・エクイティ(PE)ファームを例に、アメリカの「第2次金ぴか時代」を告発した書である。PEファーム、例えばカーライル、KKR、ブラックストーンなどはどんなことをやって富を築いてきたのか。

 例えば1987年、カーター政権の大統領副補佐官の経験のあるルーベンシュタインは、4人の知人と共同で投資会社、カーライル・グループを設立した。彼は元政府高官と親密な関係を築き、その人脈をフルに活用し、カーライルの運用資産残高を1987年の500万ドルから2003年の140億ドル、さらに22年の3760億ドルへと伸ばした。

 PEファームは、自己資金はわずかながら、多くの投資家の資金や借入金によって企業を買収する。そして数年後には転売して利益を得るために、様々(さまざま)な手口を駆使する。

 07年、カーライルが大手ヘルスケア企業のHCRマナーケア(ナーシング・ホーム)を買収した時も同じだった。買収のために61億ドル(そのうち48億ドルが借入金)を投じたが、10年にマナーケアの不動産を別の投資会社に60億ドル以上で売却した。マナーケアが建物を引き続き利用するには年間5億ドル近い家賃が必要になった。マナーケアはさらに建物の保険料、維持管理費、固定資産税も支払う契約になっていた。カーライルは取引手数料や助言手数料まで受け取っていた。

 さらに深刻なのは、ナーシングホームの業務の基本を無視したために、介護サービスが著しく低下したことである。同様な手口が、例えば刑務所ビジネスの民営化、水道・救急・消防事業の民営化にも顕著にみられた。それに対して、規制当局が介入に消極的なのも同じだった。

 驚くべき事例の列挙に言葉を失うが、それでも行動を起こす気があれば「より良い世界は実現可能である」と著者は希望を捨てていない。はたして今のアメリカの政治にそれが可能かどうか疑問視する向きも多いだろうが、まずは問題の所在を知ることが必要だ。警世の書として一読をすすめる。

(鈴木正徳訳、東洋経済新報社・3520円)

米国の弁護士、元連邦検察官。多方面のメディアに論考を寄稿。

◆もう1冊

『増補版 ブラックストーン・ウェイ』S・シュワルツマン著、熊谷淳子訳(翔泳社) 

中日新聞 東京新聞
2026年8月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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