第五回 ヒゲクジラ類の食べ方いろいろ
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第三回で年明けの三宅島での調査についてご紹介させていただきましたが、実は高知県の土佐湾にいる鯨類についても調査遂行中でございます。
高知県に面している土佐湾は南方から流れてくる黒潮(暖流)のおかげで、豊かな海が育まれ、我々人間も多くの水産資源を得ています。そんな土佐湾には「カツオクジラ」という12mほど(なんと4階建てのビルと同じくらい!)のナガスクジラ科のヒゲクジラが一年中定住しています。
鯨類は、我々と同じ「歯」を持つハクジラ類と今回の主役であるヒゲクジラ類に大別されます。
ヒゲクジラ類の最大の特徴はなんといっても上あごに「ヒゲ板」または「クジラヒゲ」と呼ばれる摂餌器官が備わっていることです。「ヒゲ」と聞くと、人間の男性の口の周りに生えているヒゲを想像しがちですが、構造的には爪や髪の毛に近く、口腔粘膜がケラチン化したものです。片側の上あごに200から400枚のヒゲ板がびっしりと生えています。
ヒゲ板は、ヒゲクジラがエサ生物を海水ごと取り込んだ後、エサ生物だけこし取って食べるための器官です。このヒゲ板は種によってその枚数や大きさ、色などが違っているので、ヒゲクジラのプロになるとヒゲ板だけで種類を判別できるようになります。このヒゲ板は昔、日本では人形浄瑠璃のバネ、くしや耳かき、西洋では女性のコルセットなどの材料になっていたので、そうした産業利用も盛んな時代がありました。
ヒゲクジラ類の体のサイズはおおむね大きく、季節ごとに地球規模で大回遊する種もいます。
そんなわけで、土佐湾はホエールウォッチングも盛んであり、国内では小笠原諸島に次いで2番目に古いウォッチングポイントとなります。我々は高知龍馬空港から車で2時間半の距離に位置する黒潮町で、NPO砂浜美術館と地元の漁師さん達がコラボしてホエールウォッチングをしている船に便乗し調査をさせて頂いています。
研究プロジェクト名はズバリ「クジラのうんこプロジェクト」! 東京大学、宮崎大学、帝京科学大学などと共同研究として進めています。詳細は改めてご紹介しますが、クジラのうんこから海洋生態系を理解することが目的です。
実は、うんこを毛嫌いしているのは人間のおとなだけです。子どもはうんこが大好きでとても興味を持っていますし、うんこ博物館など、うんこをテーマにしたイベントも定期的に開催されています。さらに、自然に生きる生き物にとって生き物の排泄物は明日の糧です。動物の排泄物(糞や尿)にはリンや窒素、鉄などが含まれており、これらは食物連鎖の一次生産者である植物プランクトンの栄養源であることが知られています。そう、海洋生態の縁の下の力持ちは、実は植物プランクトンなのです。そのため、うんこは海洋生態系全体にとっても重要なファクターなのです。
今回は、土佐湾のカツオクジラ、そして地球最大の動物と謳われているシロナガスクジラも属するヒゲクジラ類について、特に彼らの食べ方を中心に紹介します。


