第七回「血液型別 宮部みゆき小説ナビ(前編)」『我らが隣人の犯罪』他
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さて、今回からは、僭越ながら、小説ナビゲーションを、独断でやってみようと思い立ちました。
ただ、何か趣向がないと面白くないので、かなり無理っぽいですが、むかし流行った血液型を使ったものにしてみようと思いますので、お付き合いをお願いいたします。
名付けて《血液型別 宮部みゆき小説ナビ》。
血液型にこだわっている私ではないけれど、人間のタイプによって読む作品の傾向も違ってきて当然ですから、巷間言われている「血液型別の性格」をベースに考えてみました。
まずはA型から始めましょう。真面目で気配りがいい反面、やや神経質。日本人の4割を占めるA型の人におススメする宮部作品の順序は、
①我らが隣人の犯罪
②火車
③模倣犯
④ソロモンの偽証
ということになりそうです。
まずデビュー作を含む短篇集①でもって、宮部作品の初期のプロトタイプが様々に楽しめます。
そして代表作の一つである②。A型の人だと、大ベストセラーのこれを外して先に進むことは出来ない相談ですね。
お次の③は、犯罪ミステリーとしての②をさらに発展させた大作。21世紀への変わり目に見せた宮部さんの飛躍を読み取って頂けるものと思います。
ラストバッターは④。登場人物の多い、文庫本で6冊の大長編で、中学生たちが一つの伝説を作る物語です。後半は法廷小説としての楽しみが待ち受けています。大河が何度か大きく流れを変え、終盤にびっくりするような真実が明かされる。A型の人に「正義とは何か」を問う作品でもあります。
この①~④は、とてもオーソドックスな順序で、A型限定というわけでもありません。世界中の読者の誰しもが、この4冊で宮部作品にハマってくれるものと思います。
さて、お次はB型。他人に合わせるだけでは物足りない、独断専行のきらいのあるこのタイプの人には、
①さよならの儀式
②龍は眠る
③理由
④この世の春
という順序での読書はどうでしょうか。
①は長期にわたって書かれたSF短編を1冊にまとめた最近の単行本で、特に表題作は心に沁みる切ない物語です。②もSFになりますが、超能力者の苦悩が立体的にわかる現代ものの傑作。
そして③は、ご存じ直木賞受賞作ですね。現代社会の家族の問題を独自の設定で捉えなおした作品。
最後に、現在までのところ私が最高傑作と信じてやまない近年の大作時代小説の④を持ってきました。「現在までのところ」と断ったのは、宮部さんが今も進化を続けているためです、念のため。
この作品、時代小説の味わいとともにホラー風味が強く効いていて、途中で何度も「エエエッ」とか「ギャッ」とか叫んでしまうこと必至であります。
B型の人たちですから、こうしたエッジの利いた作品で、思わずのけぞっていただきたいものです。