第一回 ぼくらはこれを奇跡と言うのだろう

それでもやっぱりすてきな明日

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©ながしまひろみ
©ながしまひろみ

 昨年、25歳の時に中学校で国語講師をしていた時の生徒から出版社経由で手紙をもらいました。そう、なんと26年も前。
 家に置きっぱなしの本を見ていたら瀬尾まいこという名前に見覚えがあって、よくよく考えたら、瀬尾先生やんと気づいたとのこと(本名で活動していてよかった)。今、自分は小学校の先生になっていて、ぜひ学校に来てほしいということなどが書かれていました。
 小学校に来てほしいとは、なんと素敵な申し出。中高だけで小学校の教員免許は持っていない私は、来世で小学校教員をやるつもりだったのです。
 さっそく記入してあったS君のメールに、講演とか人前で話すのは嫌だということ、好き嫌いが多いから給食は食べたくないこと(教員時代にどれだけ牛乳を隠して職員室に持ち帰ったことか。そして、どれだけ生徒に見つかりやいやい言われたことか)などと、やりたくないことを並べ、最後にしてみたかったことを書きました。
 みなさんは、「今、小学生に戻れたら天才になれるだろうに」と思うことありませんか?
小学時代の私は、賢くもなくおとなしい生徒で学校が苦手でした。でも、今なら勉強もわかるうえに、人目を気にしなくていいことを知っているから、まじめでいることに照れず優等生になれるはず。
 このチャンスを逃したくはないと、私は「生徒をやる。転校生ってことにして、S君の授業を受けさせて。あ、ちなみに東京からの転校生で(隙があれば都会にあこがれる私)」と要望。そんなこんなで、S君と私、1時間ずつ授業しようということで決定しました。
 小学6年生全体で2月末に授業をすると決まり、教材用にどうせならS君を主役にした短い小説を書こうと、彼が中学時代にくれた手紙に目を通してみました。
 S君は調子乗りで愉快な生徒でありながらも実は誠実でまめで、私が中学校を去った後も、何度か手紙をくれていたのです。