第二回 グラサン・ボス

それでもやっぱりすてきな明日

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©ながしまひろみ
©ながしまひろみ

 2025年4月に刊行された小説『ありか』は、フィクションなのですが、私の日々が書かれている部分も多く、登場人物も実在する人がいます。
 サングラスをかけて段取り命の主人公のママ友「三池里美」さんも、私が幼稚園で出会ったママ友そのものです(この後、彼女のことを途中まで三池さんと表記します)。

 娘が幼稚園年長に上がる前、永遠に逆上がりで鉄棒を回り続けられ、光の速さで走る運動神経抜群の転校生がやってきました。
 運動神経だけじゃなく、明るくて優しい男の子はみんなの注目の的。そして、その子のお母さんの三池さんは…、恐ろしい人物でした。
 三池さん、幼稚園に来る時にでかいポルシェに乗ってきはるんです。そして、顔にはサングラス。薄い色付き眼鏡ではなく、黒い本気のやつ。しかも、背が高くてモデルみたいな体形に派手な…いえ、おしゃれな格好。ちなみに旦那様はサッカー選手。
 そして、行事などの説明会で、三池さん幼稚園に対してガンガン意見を言うんです。
「私は引っ越しが多い家庭だからさ、言いにくいことは全部私が言うよ」
とみんなに言ってはりました。
 さすがグラサンをかけている人は強いなと、私はそっと遠くから眺めておりました。

 卒園が近くなったころ、私は謝恩会委員になってしまい、てんてこまいになっておりました。娘の幼稚園の謝恩会、やたら力を入れるんですよね。すると、そのころには打ち解けていた三池さんが、
「なんかやることないん? 私、委員ちゃうけど、手伝うわ」
と言ってくれて、「じゃあ…」とちょっと頼んでみると、バリバリにやってくれるではないですか。
 三池さん「段取り命」が口癖で、やることがめっちゃ速いんです。実は隠れ「段取り命」の私。一緒に作業をしだすと、めちゃくちゃに気が合い、私は三池さんを「ボス」というあだ名で呼ぶようになってました。サングラスで幼稚園来る人、ボス以外に呼び方ないですよね。