第三回 奇跡は案外しょっちゅう起こる
更新
エッセイの初回に教え子だったS君が働く小学校に行ったことを書いたのですが、その後、再び会うことがありました。
2度目の再会の場は書店。京都の書店さんでのサイン会でです。
この書店さんでサイン会をさせていただくことになったのも、手紙がきっかけでした。違う書店さんのイベントに来てくださった書店員のYさんからいただいた手紙に「夢は自分の店でサイン会を開くことです」と書かれていて、「うわー夢をかなえる機会を私にくれるってこと?!」とずっとわくわくしていたんです(サイン会を開くことが夢であって、瀬尾さんのとは一文字も書いてなかったけどな)。
そして、1年近く経ってお店に呼んでいただけることに。何かをしたいと進む人の力ってすごいです。と同時に、手紙や本が持つ「文章」の不思議な力も感じずにいられません。
小学校に行くきっかけとなった、教え子のS君が出版社経由でくれた最初の手紙には、瀬尾まいこという名を目にし、もしやあの瀬尾先生かもとネットで経歴を調べた後、私のエッセイを読んで、確信したと書かれていました(Xの瀬尾まいこ公式アカウントで許可を得て彼の手紙を載せているので、詳細は見てください。彼は「筆跡が公開されて、脅迫状を書けなくなった。書く予定はないけど」と言ってました)。
ネットで情報を得られる世の中になっていても、1冊の本が最後の一押しになったりするんですよね。
そして、S君の手紙には、26年前講師だった私の最後の日のことも書かれていて、最近スーパーに着いてから、「で、私は何を買いに来たんだっけ」と立ち尽くすこと度々の私に、その日のことを一気に思い出させてくれました。
最後の日、クラスのみんなに呼び掛けて一人100円を集め、花束を買いに行きました。
当時まじめだった僕は、学校にお金を持って行ったらあかんと家に集めたお金を置いていて、ダッシュで家に帰って、花束を買いに行き、しかも、制服のまま店に行ったらあかんと思って、上だけボーダーのTシャツに変えて花束を買いに行き、そのままの格好で中学校に戻ることになって、変な格好でカスミソウたくさんの花束を渡したことを覚えています。
もう少し句点を打って区切ったらええのにという文章に、中学時代のS君がしゃべってる姿がよみがえり、「そう。しましまや!!」と声を上げました。
S君の服が白と黒の太いボーダーだったことが頭に浮かんだのをきかっけに、その日のことを思い出しました。粉々にちぎった大量の折り紙を花吹雪のようにかけてくれて、その後ほうきで掃除したこと。黒板になんやかんや書いてくれて、チョークの粉が付くと冬で黒い制服の生徒と消すのに苦労したこと。片付けの場面が多めに浮かぶのは、私が掃除嫌いだからではなく、ふとした瞬間の生徒とのやり取りが楽しかったからのはず。
改めて読むと、お金を持っていくことや制服での買い物は気にするくせに、ボーダーのTシャツで学校戻るのは平気だったのはなぜか謎ですが、今より緩い時代も懐かしく感じました。


