第五章 山荘ディスソリューション【3】

街角ハルシネーション―探偵AIのリアル・ディープラーニング―

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前回のあらすじ

「以相は渡さない」「私のために命を懸けるなんて、どういう風の吹き回しかしら」振り向くと、廊下に司法が立っていた。猟銃をこちらに向けている。

イラスト:レム
イラスト:レム

     *

 時は少し遡る―。

「橘ばななが裏切り、合尾たすくと私を拉致した。黒幕はおそらく右龍司法。現在、上信越自動車道の碓氷軽井沢インターチェンジ付近を、コンテナ付きの大型車で移動中」
 以相の右腕が運んできた手紙にはそう書かれていたのです。
「右龍さんが!?」
「司法が!?」
 懐かしい名前に対して、私と左虎さんは同時に声を上げました。
「でもどうして彼が輔さんを…」
「目的はあくまで以相で、合尾くんは巻き込まれただけなんじゃないかしら。右龍事件で司法が以相を恨んでいてもおかしくないし」
「ううむ、強引なやり方は相変わらずというわけですか」
 彼はかつて捜査のために輔さんを危険な目に遭わせているので、私は嫌いです。その後、助けたからといって帳消しになるはずがありません。
「でも、この手紙の内容を鵜呑みにしてもいいのかしら。以相の罠かもしれないわよ」
「私も一瞬その可能性を考慮しましたが、以相の性格からして、部下に裏切られてさらわれたなどという、自分の株が下がる嘘をつくはずがありません。ゆえに、手紙の内容は真実だと考えられます。彼女は本当に困っているのでしょう。この私に助けを求めるくらいにね」
「で、どうするの? 助けに行く?」
「当たり前でしょう。もちろん以相ではなく、輔さんを助けに行くんですよ。上手く行けば、以相も捕まえられるかもしれませんしね」
「そうね」
「でも碓氷軽井沢インターチェンジというところが現在地らしいですが、移動中では目的地が分かりません」
「もしかして…」
「心当たりがあるんですか?」
「北軽井沢に右龍家の別荘があるのよ。そこに向かっているのかも」
「よくご存じですね」
「昔デートで使ったことがあるのよ。まあ彼にとっては、別荘に女を連れ込むという母親への反抗でしかなかったのかもしれないけどね」
 左虎さんは自嘲するように言いました。彼女の心理はよく分かりませんが、目的地はそこである可能性が高いでしょう。他に候補地がないなら、まずそこに向かうべきです。
「左虎さん、すぐ車を出してください―って最初のショッピングモールに置きっぱなしですね」
「あそこまで取りに戻ると随分時間がかかるわよ」
 その時、クラクションの音がしました。