第六回 ②
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前回のあらすじ
阿賀野陸、35歳 グラフィック・デザイナー。事故で夫の晶くんを亡くした従妹の蘭が実家に帰ってくることになった。生前の晶くんに依頼された彼と両親が営む〈デリカテッセンMASHITA〉のデザインに、今後ボクはどうかかわるかを確認する頃合いだなと、響くんを呼び出した。すると、長兄の翔くんもついてきたから、聞いてみたんだ。響くんと家業を継ぐ意志はないのかって。

訊いたら、うーん、と苦笑いしながら下を向く。
「俺が一緒にやらなくても、現状維持は全然できるんですよ。現状維持でいいとするなら俺はいらないし、かといって俺が入ることによってどこまでやれるかちょっと疑問でもあるんで」
気持ちの問題かな。家業を継ぐという断固たる決意、覚悟ってものができるかできないかっていう。
「ただ、蘭さんがいなくなっちゃうんで」
「あぁ。それについては申し訳ないです」
「いやそういうんじゃないんです。蘭さんのためにそうした方がいいって言い出したのは俺なんですから」
そうだったのか。でも、確かに翔くんなら言いそうだな。
「蘭さん、本当に看板娘になっていたんですよ。傍目にもハッキリとわかるぐらい店が明るくなって客足も伸びていました。そういう人がいなくなっちゃうのはダメージではあるんで、ここはひとつ俺が、という気持ちはあるにはあるんです」
「あるの?」
響くんが驚く。初めて聞いたんだ。
「ないことは、ない」
「言ってくれなきゃ」
「ただ、それにはパートナーが必要かなって」
パートナー? 翔くんが、軽く微笑む。
「俺と一緒に店を切り盛りしてくれる、蘭さんみたいな素敵な人が俺の隣にいなきゃちょっとできないかなって。実は少しだけ期待はしてたんですよね。蘭さん、このまま家にいるって決断してくれないかなって。あるいは響が蘭さんにいてくれって頼むとか」
「いや」
響くんが驚くように言う。
「それはダメだって言ったのは翔兄でしょう」
「そう。ダメなんだそれは。蘭さんのためにならない。ただ、店のためという観点からはちょっとだけ期待したっていう話。変な理屈に聞こえるかもしれませんけど、うちみたいな店は、夫婦という二人が切り盛りすることで上手くいくものだって考えてるんですよね」
「そう? なの?」


