■1-5 見えるとか、見えないとか 

幽霊を信じない理系大学生、霊媒師のバイトをする

更新

前回のあらすじ

死んだひいばあちゃんの弔問に「女学校の同級生」を名乗る謎の女性が現れた。鵜沼ハルと名乗る奇妙な霊媒師は、どう見ても俺の母さんより若い。

イラスト/土岐蔦子
イラスト/土岐蔦子

■1-5 見えるとか、見えないとか 

 今この場には、ひいばあちゃんの霊がいて、この女性にはそれが見えている。 
 か、どうかは一旦保留するとしても、俺には見えない種類の何か、、が、彼女には見えているらしい。それは確かだ。 
 とはいえ、それ自体は別に驚くことでもない。 
 見えるとか聞こえるとかいうのは、もともとかなり個人的なものだ。色覚は遺伝的な差があるし、歳をとると高音が聞き取れなくなる。人間に見える世界というのは、かなりの部分が感覚でフィルタリングされる。 
 何より俺自身、「他の誰かに見えているものが自分には見えない」ということにはすっかり慣れている。このあいだの火葬の時だって、小さな従妹の「どうして焼いちゃったの」への適切な答えが、叔母さんには見えていて、俺には見えていなかった。 
 そういうのが苦手な人もいれば、得意な人もいる。 
 目の前にいるこの自称霊媒師は、「そういうの」が異様に得意な人間なのだ。そんな人がいてもおかしくない。 
 そう考えるべきだ。 
 だとすれば。 
「ひいばあちゃんの霊が、この場にいるとしたら、、、、、、 
 と、仮定の形で俺は尋ねた。