「この歳になって短篇を書くのがこんなに楽しいとは」宮部みゆき新連載「続 ぼんぼん彩句」開始記念インタビュー

続 ぼんぼん彩句

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宮部みゆきさんが、初めて俳句をお題に短編を書くという趣向に挑んだ『新しい花が咲く―ぼんぼん彩句―』(新潮文庫)。「ダメ男を好きになっちゃった女のシリーズだ」「私はこれを死の短編集だと思った」とレビューされた同作は、宮部さんにとって久しぶりの現代小説です。12の俳句から紡ぎ出された一編一編はいまを生きる人々の心を掬い取っていて、時に怖く、時に切なく、涙を誘う作品です。

そして待望の続編「続 ぼんぼん彩句」が、遂にスタート! 連載開始を記念して、宮部さんに今後の構想や連載にかける想いをお聞きしました。

「この歳になって短篇を書くのがこんなに楽しいとは」と語る宮部さんのとっておきのお話をお楽しみください。

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 ―昨年末に刊行した『新しい花が咲く―ぼんぼん彩句―』(新潮文庫)の続編となる「続 ぼんぼん彩句」の連載が今月からスタートしました。

 この作品集は私にとって久しぶりの現代物で、俳句をお題(タイトル)に短編を書くという初の趣向に挑みました。収録されている十二の俳句の作者は、私がお仕事を通して親しくしてきたほぼ同年代の人達と作った「BBK(ボケ防止カラオケ)」会のメンバーです。設立当初、BBKは定期的に集まってカラオケを歌おうという趣旨でしたが、作家で俳人の倉阪鬼一郎さんの『怖い俳句』(幻冬舎新書)に出会って、俳句の世界に魅せられた私がメンバーを句会に誘ってみたところ全員乗り気で参加してくれることになり、「ボケ防止句会」の意味も持つようになりました。今回の連載ではBBKメンバーに加えて、スペシャルゲストにもご登場いただく予定です。

 ―楽しみですね。句会を始めた頃から、俳句をお題に短編を書くというアイデアを持っていらしたのですか。

 はじめのうちは、楽しく切磋琢磨して句作に取り組んでいましたが、私はやっぱり骨がらみで小説家なので、へぼ句をひねる一方で、何とかして俳句を小説の題材にできないかと考えるようになりました。そして、このアイデアを思い付いたのですが、タイトル句の作者の創意とはかけ離れたストーリーになることも大いにあり得ます。その懸念をBBKのみんなに伝えたところ、ありがたいことに、「それでもかまわない」「どんな短編になるか興味ある」と快諾してくれたので、いざ取り組むことができました。

 ―「続 ぼんぼん彩句」では、5編の短編を連載予定ですが、今作も現代物中心でしょうか。

 掲載予定の「家中の鏡磨いて百物語」という短編は、時代小説シリーズ「三島屋変調百物語」のスピンオフの1編になる予定です。三島屋シリーズの読者の皆さんに、「宮部は『ぼんぼん彩句』も書いています」というご挨拶と宣伝(笑)をさせていただけたらと。この作品だけは例外的に時代小説になりますが、「ぼんぼん彩句」シリーズは基本的に現代小説なので他の4編は現代物です。

 ―長く離れていた現代物をお書きになるまで、どういうご心境だったのでしょうか。

「ぼんぼん彩句」シリーズ立ち上げ時に、短編を最初に読んでもらうのは俳句の作者にしよう、その方に一番驚いてもらえる作品にしようと決めたんです。牧歌的な句から怖い話や犯罪ものを書くようなギャップで驚かせるのなら、ジャンルにこだわっていられない。事象としてその瞬間を切り取って書くなら切れ味が勝負になるので、レトリックを深く掘り下げない。ある事象について考え続けない。深く思索しない。いたずらに心理に分け入らない。そうだ、今までやっていなかったことを全て現代物の短編小説でやってみよう! と、とても自然な流れで現代物を書こうと思えました。
 私は短編でデビューしたので、自分自身シニアの入り口に立った辺りで原点回帰して、現代小説の短編を書きたいという想いがどこかにありました。それが現実になったのは、俳句のおかげです。