ほんと用うそ用日記二冊買ふ ②
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前回のあらすじ
内山理子と笹野和美は、中学の同じ仲良しグループにいる。優等生で美少女の理子と活発な河西陽菜は同じ水泳部。一方、和美は地味で大人しく運動も苦手で、同級生から「心霊写真」と呼ばれるほどだが、グループではぶられたりしていない。和美は居場所があることが嬉しい反面、いつも同じくらい不安だった。そして、二年生の夏、地元の巴三宮神社の夏祭りの盆踊り会場で、和美は現実を思い知らされることになった――

理子と陽菜は、この夏も、水泳部のハードな練習でこんがり日焼けしている。その肌の色に、白地の浴衣が清々しく映えていた。絵柄は理子の方が銀河と流れ星、陽菜の方は袖や身ごろ、裾回りに市松模様の花茣蓙をあしらったものだ。モダンで洒落ている。一緒に下見に行ったとき、和美はこんな絵柄の反物にはまったく気づかなかった。アンテナの感度が違うのだろう。
他のメンバーは「お母さんのを借りてきた」「踊りのお稽古をしてる叔母さんが、前の大祭のときに仕立てたのをくれた」などで、巴さんやお祭りにちなんだ絵柄のものを身につけていた。なかでも、若竹色の地に、江戸時代にこのあたり一帯を治めていた大名家の旗印を染め抜いた浴衣は、大人びていて素敵だった。理子と陽菜も、「いちばんはこの浴衣だね~」と感動していた。
朝顔なんて、どんなにきれいでも平凡だった。その平凡さがわたしにはちょうどいいのかな。そんなふうに思いながら、踊りの輪のなかで目を伏せて、和美は涙をこらえた。
翌日は、大祭の賑わいにまじり、揃って神社に参拝した。人混みのなかでお詣りを済ませ、神楽殿から流れる雅楽を聴きながら、大祭のときだけ公開される本殿の奥の間の天井絵を観覧し、お守りや開運グッズが販売されている一角へ。ここも普段は窓口が閉じられているが、今は行列ができている。御朱印窓口では整理券を配っていた。
「大祭のときだけのお守りってどれ?」
「あっちの箱にある“幸福守り”。デザインが可愛いでしょ」
楽しそうな理子たちから少し離れて、和美はまわりを見回した。春は梅と桜、秋は紅葉が美しい境内だが、今は夏の緑とお祭りの飾り付けが目に鮮やかだ。
大祭のときはどこもすごく混むから、動きやすい恰好をしてきた方がいい。陽菜のアドバイスで、今日はみんな、Tシャツにショートパンツやワンピース、足元はサンダルやスニーカーで集まった。それでも、お洒落度の違いは露わだ。昨夜の浴衣比べは「特別なファッション」として割り切ることができても、こういう日常の「ちょっとお出かけ着」ではそうはいかない。スタイルの善し悪しも丸わかりだ。和美の心は、だんだん固まる油脂のように重くなっていった。
学校内にいるときは、目をそらそうと思えばそらせる格差が、学校の外では露わになる。和美はやっぱり、理子と陽菜が示してくれる友情に甘えるべきではないのかもしれない。自分と釣り合う、大人しくて目立たない友達を探した方がいいのかもしれない。そういう気楽さと安らぎが必要なのかもしれない。
ぼんやりしていた和美は、理子と陽菜の笑い声で我に返った。二人は売店の前で、神主さんと立ち話している――と思ったが、違った。相手は神主さんの助手みたいな、白い筒袖に水色の袴という装束を着込んでいるだけで、歳はまだ若い。和美たちとおっつかっつだ。しかもその顔には見覚えがある。
――あ、水泳部の先輩。


