ほんと用うそ用日記二冊買ふ ③
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前回のあらすじ
笹野和美は地味でおとなしい中学2年生。水泳部で人気者の内山理子や河西陽菜と同じ仲良しグループにいることが嬉しい反面、常に不安だった。皆で行った地元の巴三宮神社の夏祭りの盆踊り会場で、他の子との格差を痛感した和美は売店で「百日日記帳 真」と「百日日記帳 願」を見つける。そしてある日、「願」に本当の願望を書いてしまう、「今年は去年みたいに二人で観たい」と。すると、理子から映画に誘われたのだ、しかも2人で。

ムビチケを買って、二十日に二人でシネコンへ出かけた。映画はよかったし、そのあとで寄ったカフェのパンケーキも美味しかった。ただ去年の夏よりは、理子との会話の盛り上がりが少なかったような気はした。
それでも、和美は充分に満足した。そうなると欲が出てきた。なにしろ、すぐにお正月がくる。
「理子がわたしと二人で初詣と初バーゲンセールに行ってくれますように」
それもまた実現した。また、理子の方から提案してくれたのだ。二人で行こう、と。
初詣で参拝したのは、百日日記を買ったあの神社だ。和美は心を込めて手を合わせ、神様にお礼を申し上げた。ところが、その足で向かった初バーゲンセールは、二人が行こうと相談していた店を一つ回っただけで、理子が「疲れちゃった」と帰りたがり、散会することになった。
クリスマス映画のときは、嬉しくて気づかなかった。でも今回は気づいたし、気づいてしまえば、和美は自分をごまかすことができなくなった。
――願日記に書いて、そのとおりにふるまってもらうと、理子にはそれが不自然な感じがするんだ。
初詣の最中も、理子がふっと目を泳がせて、
――なんで和美と二人だけで行動してるんだろう。
――どうして陽菜を誘ってないんだろう。
戸惑っているのが、和美にもわかった。だから和美も居心地が悪くて、理子と別れて一人になると、ほっとして膝ががくがくした。
願日記で他人を動かそうとすると、それは嘘に通じる。勝手な「願」の裏には「嘘」がある。自分が「真」と組み合わせて二冊一緒に買い、一緒に付け始めたことにも、実は意味があったのだ。それは正と負、光と闇だと。
わたしの勝手な想いを矯めるための、巴さんのお計らいだったのかもしれない。そう思うと、和美は恐ろしくなってきた。
さらにもう一つ、和美を怯えさせる状況が生じてきた。グループの他のメンバー、なかでも陽菜を置いてきぼりに、理子が二度も和美と二人だけで行動したことで、みんなのあいだに不審と不信が生まれてきたのだ。理子は陽菜とよく話し合ったので、喧嘩になることはなかった。だが、二人が揃って和美に対し、ちょっと距離をとろうとし始めたことは、明らかだった。
――なんかヘンだったものね。
この「距離」は、和美を心底震え上がらせるものだった。理子との友達付き合いを失うことを考えたら、心が凍る。いや、いっそ心が死ぬ。二度と生き返れない。
だから、和美は厳しく自分を律することにした。もう一方的な「願」はしない。願日記帳には、あとあと嘘に通じるようなことはけっして書かない。自分の努力でかなえられることを記そう。体重のこと。ファッションのこと。勉強のこと。そろそろ受験のことだって考えなければならないんだ――。
だけど、和美はまだ子供だった。子供が自分を律する枷は脆い。


