麻酔

落雷はすべてキス

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夢も恋もぬいぐるみほどは燃えない。大切だったかどうかわからなくなったものの方が、大切なものより、失うとつらいんだよ、だから私はきみに、ちゃんとさよならを言うんだろう。きみは、とてもつらいだろう。擦ったマッチにまとわりついた火が、遠くの夕日と同期していく、誰もいない世界で眠るときでさえ、誰かが自分の名前を呼んでいる気がする。きみは、私がいなくなると、私が大事だった気がするだろう、そうやって人はなんとなくどうだってよかったものを忘れられなくなるんだろう。空は毎晩焼かれて毎晩痛いらしい、赤く滲んでかわいそうだ、きみは、きみにとってどうだっていい人が、何人もいなくなって、悲しくなって、まるで自分の人生には好きだった人がたくさんいたような錯覚の中、人生は美しかったと思う、その日に見た夕焼けは、とても美しくて、きっと喜んで燃えている。

 


(本連載は今回で最終回となります。ご愛読ありがとうございました。なお、本連載の作品は弊社より単行本として刊行予定です。)