本屋大賞作家が先輩作家にガチ説教!? 業界一“受賞者がおせっかいな文学賞”の贈呈式は「まるで女子校」

私たち、同じ女子高の卒業生みたい――町田そのこ・小林早代子対談

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今年で24回を迎える「女による女のためのR-18文学賞」。
「女性に焦点を当てた文学賞としてスタートしてから四半世紀―。数多くの人気作家を世に出してきた同賞は、受賞者同士の連帯が強いのも大きな特徴です。

新作『たぶん私たち一生最強』が話題の小林早代子さんと、本屋大賞を受賞した『52ヘルツのクジラたち』の映画化も記憶に新しい町田そのこさんは、2015年、2016年と続けて「R-18文学賞」を受賞した先輩後輩の関係。

お互いをファーストネームで呼び合う仲の二人が、同賞の魅力とその出身作家独特の連帯感について語ったことは―。

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たぶん私たち一生最強

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町田  先輩、ご無沙汰しております。
 
小林  先輩だなんて! 確かに、R-18文学賞は私が1年先に受賞しましたけど…。そのこさんが受賞された2016年の贈呈式で初めてご挨拶をして、その後も何度かお会いして、LINEではたまに連絡を取り合ってましたが、ちゃんとお話しするのは久しぶりですよね。最後に会ったのいつでしたっけ?

町田  会った年は覚えてないけど、最後に会った時のことは鮮明に覚えてる! R-18文学賞の贈呈式の2次会で、歴代受賞者で早代子を囲んでガチ説教したよね(笑)。

小林  そうそう。ちょうど新卒で勤めた職場を辞めた頃だったから、私だけフリーターみたいな状態だったんですよね。

「くたばれ地下アイドル」で第14回読者賞を受賞した小林早代子さん
「くたばれ地下アイドル」で第14回読者賞を受賞した小林早代子さん

町田  彩瀬まるさんや一木けいさんと一緒に「保険だけは入れ」って言ったよね。私はお酒も入ってゲラゲラ笑いながら喋ってたけど、彩瀬さんは、最後笑ってなかったよ。

小林 彩瀬さんはマジで心配してくれてました。一木さんはその後編集者さんと打ち合わせがあるからって、ひとり先に席を立ったんですよね。

町田  懐かしい。コロナの前だったから、あれから5年くらい経ってるのかな。早代子、今はアメリカに住んでるんだよね?

小林  そうなんです。結婚して、夫がアメリカの会社で研究者をしているので、夫についてく形でアメリカに来ました。

町田  最後に会った時は保険に入れって説教されてた早代子が、今はアメリカにいるんだもんね。なんか早代子らしい。

小林 え、どういうことですか?

町田  私の想像を余裕で超えていくってこと。早代子には日本や日本社会なんて狭いだろうなと思ってたよ。てか、アメリカにいることより、結婚したことにびっくりしたよ! 早代子って家庭に収まれるの? って。

小林 え、そういうイメージ!? まあ、私のプライベートな話より、会ってなかった間の話でいえば、そのこさんのご活躍たるや、ですよ。本屋大賞を受賞して、本もばんばん出して…本当に凄すぎる。私、この夏に2作目の本を出しまして。そもそも6年ぶりで、ようやく出せた! みたいな感じでわざわざアメリカから一時帰国してたんですが、そのこさんの『わたしの知る花』と刊行時期がほぼ一緒だったんですよね。だから並べて展開していただける書店さんも多くて、書店回りをする度にそのこさんのパワーを感じてました。

ドヴォルザークに染まるころ

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町田 ちょうど同じ時期に書店回りをしてたんだよね。書店さんから「昨日、小林さんが来たんですよ〜」って教えてもらって、実際に会うことはできなかったけど、早代子も頑張ってるんだなあと思って嬉しかった。

小林 それは私のセリフです。刊行時期が近かった、そのこさんの『わたしの知る花』と木爾チレンさんの『みんな蛍を殺したかった』の文庫版、それから本屋大賞を受賞した宮島未奈さんの『成瀬は天下を取りにいく』と続編の『成瀬は信じた道をいく』がどの書店さんでも大きく展開されていて、私も近くに並べてもらって本当に嬉しかったし、もっと頑張ろうって思えました。

町田  この数年の間に宮島さんや私の本屋大賞もあったし、窪美澄さんの直木賞受賞もあって、R-18文学賞の注目度が上がっているのはすごく嬉しい。

小林  私も嬉しいです。それにしても、そのこさんや宮島未奈さんのことは、普段全然本を読まない友人でもみんな知ってて、本当にすごいなって改めて思います。

町田  確かに本屋大賞の影響力というか認知度はすごいと思う。本屋大賞を受賞してから、過去の作品も読んでもらえるようになったし、書店さんは売り場を広げて手厚く扱ってくれる。本屋大賞と関わったことで、書店さんや書店員さんのことがこれまで以上に好きになったんだよね。あと、 当事者意識みたいなのも芽生えて、立場は違うけど、書店さんをちゃんと支えていかないとって思った。

「カメルーンの青い魚」で第15回大賞を受賞した町田そのこさん
「カメルーンの青い魚」で第15回大賞を受賞した町田そのこさん

小林  私も今回初めて書店回りをさせていただいて、書店員さんという仕事の解像度がぐんと上がりました。書店員さん、本を売るためにすごく頑張ってくれていたんだなって。自分の書いた小説を本屋さんで扱ってもらうということの素晴らしさとかありがたさを改めて感じてジーンとしちゃったんですよね。今は海外にいるからどうしても電子書籍に頼りがちなんですけど、手軽だからって理由でネット通販で書籍を買うのはやめようって思いました。あと、純粋に書店さんって楽しいです。

町田  私もネット通販で買うのは生活用品とかだけで、本は絶対に書店さんで買ってるよ。8月に書店回りをしてた時も、私たちはお互い別の出版社から本を出してて、特にコラボとかしたわけでもないのに、書店員さんが同じ色紙にサイン書いてくださいって言ってくれて、本と一緒に一緒に並べてくれたんだよね。

小林 ありがたいですよね。書店員さん自身が楽しんで、盛り上げてくれようとしてる。でも、R-18文学賞の出身作家さんたちも、書店員さんたちとは違った意味で、心強かったです。

町田  そうだよね。それぞれ活躍してるから、この人たちに負けないように、賞に恥じないようにもっと頑張ろうって思う。それに、賞の出身者同士の仲が良くて、みんな同じ女子校の卒業生みたいに思ってる。

小林 吉川トリコさんとか柚木麻子さんとか、あと一木けいさんもいろんな相談に乗ってくれました。みんな、私を業界内の謎の慣習とか理不尽から守ってくれようとするんです。私が相談する前から「こういうことに困ってない?」って聞いてくれたりする。すごい心遣いですよね。私もそんな先輩になりたいなって思いました。

町田  みんな優しいよね。R-18文学賞独特の雰囲気と連帯感がある気がする。贈呈式の2次会でも、どのタイミングで選考委員の先生にご挨拶に行く? ってキャッキャしたり、みんなが遠慮して食事の注文を躊躇ってる時に、彩瀬さんが「まず私が肉を頼みます!」って先陣を切ってくれたり。楽しい雰囲気と頼もしい先輩がたくさんいて、本当に恵まれてると思う。R-18文学賞の贈呈式、久しぶりに参加したくなったな。

小林  えー、私も行きたいなあ。来年、アメリカから行けるかな。R-18文学賞は、短編の賞でネット応募ができるっていうところが、敷居が低くていいですよね。あと、一人3作まで応募できるのも太っ腹! って思いました。「これなら私でも応募できる」って思ってチャレンジした記憶があります。いつか、R-18文学賞出身作家でアンソロジーとか作れたらいいですよね。『文芸あねもね』第2弾みたいな。

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【後編:「20代の頃は友達がいなくて…」やさぐれていた作家・町田そのこが40代での心境の変化を明かす】では、二人が「理想の年齢の重ね方」を語り合っています

町田そのこ(まちだ・そのこ)
1980年生れ。福岡県在住。2016年「カメルーンの青い魚」で第15回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。選考委員の三浦しをん氏、辻村深月氏から絶賛を受ける。翌年、同作を含むデビュー作『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』を刊行。2021年『52ヘルツのクジラたち』で本屋大賞を受賞。他著書に『ぎょらん』『コンビニ兄弟 テンダネス門司港こがね村店』『宙ごはん』『夜明けのはざま』『わたしの知る花』などがある。

小林早代子(こばやし・さよこ)
1992年、埼玉県生れ。早稲田大学文化構想学部卒業。2015年、「くたばれ地下アイドル」で第14回「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞し、同作にてデビュー。『たぶん私たち一生最強』が2作目の単行本となる。