「20代の頃は友達がいなくて…」やさぐれていた作家・町田そのこが40代での心境の変化を明かす
私たち、同じ女子高の卒業生みたい――町田そのこ・小林早代子対談
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女性に焦点を当てた「R-18文学賞」が2002年にスタートしてから四半世紀。
数多くの人気作家を世に出してきた同賞は、受賞者同士の連帯が強いのも大きな特徴です。
新作『たぶん私たち一生最強』が話題の小林早代子さんと、本屋大賞を受賞した『52ヘルツのクジラたち』の映画化も記憶に新しい町田そのこさんは、2015年、2016年と続けて「R-18文学賞」を受賞した先輩後輩の関係。
お互いをファーストネームで呼び合う仲の二人が、作家として、女性として、歳を重ねながら書き続けていくことの魅力と未来への期待を語り合いました。
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小林 そのこさんの『わたしの知る花』、読ませていただいたんですけど、めっちゃ面白かったです。様々な登場人物の人生を通して、時代に反映される葛藤や価値観みたいなものを描きだしていますよね。テクニカルで本当にすごいと思いました。あと、私たち作風は全然違うけど、根っこの部分、男らしさとか女らしさとかっていう社会の価値観に立ち向かおうとする部分では共通するところもあるのかなと思いました。
町田 確かに。私はこれまで、血の繋がりがなくても家族になれるっていうのをテーマにし続けてる。家族に必要なのは血の繋がりじゃなくて、一緒においしいご飯を食べるとか、日々のくだらないことを共有し合えること。早代子の『たぶん私たち一生最強』(以下、「一生最強」)は血の繋がりのない女四人が家族になる話で、私たち、まさに同じことを考えてるなと思ったよ。あと、私は女友達がほとんどいないから、「一生最強」の4人が素直に羨ましかったな。
小林 え! そのこさん女友達いないんですか!? 嘘だー!
町田 本当にいないんだよ……。作家になってやっと早代子みたいな同業の友達ができたけど、学生時代から作家になるまでの自分には、友達、特に女友達がいなくって。「一生最強」の中の主人公たちが眩しくて、すごく羨ましかった。私は友達がいないから、悩みを自分の中に溜め込んで、それを小説にすることが多いんだけど、友達がいたらこんな辛気臭い小説ばっかり書かなくて良かったのかなって思ったり(笑)。
小林 女友達の尊さとかありがたみって、若い頃より歳を重ねてから実感することが多い気がします。そもそも、そのこさんは友達多そうなイメージあるから、すごい意外ですけどね。私が久しぶりにLINEとか送っても、温かい返信をくれるじゃないですか。みんなから慕われてる人にしかできない反応だって思います。
町田 最近になってやっと友達作ろうと頑張ってるけど、 「一生最強」の主人公たちと同じ20代の頃は、友達がいなくてやさぐれてたよ。私もこういう人生があったら楽しかっただろうなと思うし、自分の娘がもう少し成長して、いつかこの小説を読んで、こんな人生の選択肢もあるんだって感じてくれたらいいなと願ってる。
小林 その感想めちゃくちゃ嬉しい! 『わたしの知る花』は、頑固おじいちゃんの光男というキャラクターがすごく好きでした。私、今はまだ30代ですけど、いつか時代のアップデートに追いつけなくなる時が来るんだろうなっていう恐怖を抱えてるんですよね。平は堅物なんだけど、高校生の奏斗くんとの関わりによって、心の動きや態度が軟化していくっていう描写がすごく素敵で、私もこうありたいなって思いました。私は自分と同世代か下の世代のこと、つまり自分が知っていることしか書けないんですけど、そのこさんは年老いた女性や男性のこともすごく緻密に丁寧に書いていて、尊敬してます。
町田 そういうふうに読んでもらえて嬉しい。私、自分の人生の目標を「かっこいいおばあちゃんになること」にしてるんだよね。「40代の美魔女」とかは、年齢的にもキャラ的にも、私が目指すのは難しそうだからあきらめたけど、理想のおばあちゃんなら、今から目指せばなんとかなりそうじゃない? だからそのためにも、おじいちゃんおばあちゃん世代の方を観察することが多くて。
小林 それでいうと、主要登場人物の一人である悦子さんはかなり理想のおばあちゃんです。iPad使いこなしてるところとか、めっちゃツボでした。
町田 そうなの。自慢話をしなくて、感性が若い。ちゃんと便利なツールは使いこなせて、若い人に不必要な偉い態度を取らない。私も、子どもがハマってるのにその魅力が全然分からないのとか操作が出来ないのとか悔しいから、こそこそオンラインゲームの練習したりするよ(笑)。

小林 かっこいい! ゲーム楽しいですか?
町田 うん楽しい。でもハマりすぎると仕事に差し支えるから、子どもみたいに一日一時間って決めてやってる(笑)。でも私にはスマブラは難しくてなかなか楽しむところまでいけなかったなあ。「一生最強」に出てくる4人はめっちゃスマブラやるよね。早代子もやってるの?
小林 最初のスマブラが出た頃にゲームやってたドンピシャ世代だったのである程度はできるんですけど、最新のバージョンとかは色々勝手が違うだろうし、若い人と一緒にできるかって聞かれるとあんまり自信がないです。
町田 アップデートって難しいんだよね。でも、早代子は自分と同じくらいの年齢の登場人物のことを書いてきたじゃない? ってことは、自分の年齢が上がるにつれて主人公の年齢も上がっていって、40代とか50代とか、いつか自然とかっこいいおばあちゃんの話が書けるようになるんじゃないかな。
小林 そうだといいな。私も10年後、世界がどんなふうに見えてるのかなってちょっとワクワクしたりします。それこそ、子どもができたらどんな気持ちになるのかな、とか。歳を取ったり経験を重ねることが純粋に楽しみです。
町田 私は40歳を過ぎてから自分の人生がすごく生きやすくなって、体が軽くなったと感じるよ。自分の心にいっぱいあった重たいものがポロポロ落ちていくみたいな感じ。今が人生で一番解放されてて、自分らしく生きられているかも。
小林 素敵です。年上の女性が楽しそうに生きてるのって希望になる。身近にいいロールモデルがいると、この先の人生に希望が持てます。
町田 40代になってから、いい意味で女として扱われなくなってきたというか、女っていうフィルターを通して見られることが減ってきて、それがめっちゃ楽っていうのもある! 若い頃は他人の目をすごく気にしてたけど、思ってたよりそれに疲れてたんだなって思う。で、40代になって、そういうものから解き放たれて残るのは、自分の気の合う人とおいしいご飯食べたりお酒を飲んだりして、くだらないことで笑って、趣味が合えば同じもので興奮し合うっていう時間。それを純粋に楽しめるようになった気がしてる。でも、私がこういうことを小説に書くと、なんか暗くなっちゃうんだよね(笑)。
小林 確かに、そのこさんって喋るとめちゃくちゃ明るいけど、小説はシリアスなものが多いですね。
町田 そうなの。書くのはそういうのが好きなのかも。でも私自身は、読んでて励まされるものを求めてるところがあるから、早代子の小説はすごく好きだよ。なんか、ほんのり甘いんだけど、飲み終えると気持ちもスッキリする、冷たい炭酸のドリンクを飲んだみたいな読後感。
小林 すごい素敵な表現……ありがとうございます。私は、そのこさんみたいに深くてずっしりした小説を書きたい気持ちもありますけど、なかなか難しいですね。
町田 そんなことないよ。だって私、早代子の年齢の時には作家じゃなかったもん。
小林 確かに……!
町田 でしょ。そういう意味でも10年後、20年後に早代子がどんなものを書くのか期待してる。
小林 なんかやる気が出てきました! そのこさんは、次々に新刊を出されてますけど、この先はどんなものを出されるご予定なんですか?
町田 単行本は11月に光文社さんから『ドヴォルザークに染まるころ』という新刊が出たところで、次は2025年の2月に初めてのサスペンスというか、事件ものの小説を出す予定なの。資料も読み込んだしノンフィクションライターさんに取材もしたし、プロットだけで3万字くらいになって、本当に大変だった……。今はそのゲラ作業が佳境を迎えてます。
小林 すご! 取材とか、プロットとか、どうやって取り組めばいいか全然分からなくて。
町田 私も手探りだよ。でも、新しいものに挑戦する手応えは感じてるかな。一方で、新潮文庫nexの「コンビニ兄弟」シリーズの最新刊も11月に出たところ。シリーズものも楽しいよ。登場人物が勝手に動いてるのを、なんとかストーリーにまとめてるような感じ。書きたいものが散らばってるからまとめる難しさはあるけど、リラックスして書ける、私にとって大事な作品。
小林 仕事量がエグいです。心から尊敬します……!
町田 私はなんだかんだ書くのが好きみたい(笑)。ほんとに大変で、毎回ヒーヒー言いながら書いてるけど、やっぱり楽しいんだよね。
小林 かっこいいなあ。そのこさんのレベルに到達するのは流石に難しいけど、私も3作目はもうちょっとスピードを上げて書いていこうと思います。
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【前編:本屋大賞作家が先輩作家にガチ説教!? 業界一“受賞者がおせっかいな文学賞”の贈呈式は「まるで女子校」】では、二人が「デビュー時の苦労」を語り合っています。
町田そのこ(まちだ・そのこ)
1980年生れ。福岡県在住。2016年「カメルーンの青い魚」で第15回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。選考委員の三浦しをん氏、辻村深月氏から絶賛を受ける。翌年、同作を含むデビュー作『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』を刊行。2021年『52ヘルツのクジラたち』で本屋大賞を受賞。他著書に『ぎょらん』『コンビニ兄弟 テンダネス門司港こがね村店』『宙ごはん』『夜明けのはざま』『わたしの知る花』などがある。
小林早代子(こばやし・さよこ)
1992年、埼玉県生れ。早稲田大学文化構想学部卒業。2015年、「くたばれ地下アイドル」で第14回「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞し、同作にてデビュー。『たぶん私たち一生最強』が2作目の単行本となる。









