累計1000万部突破! 「しゃばけ」シリーズ最新刊『あやかしたち』一章まるごと試し読み①

「しゃばけ」シリーズ最新刊『あやかしたち』刊行記念&アニメ化記念特集

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江戸は通町にある廻船問屋兼薬種問屋「長崎屋」の病弱若だんな・一太郎と彼を見守る不思議な妖たちがお江戸で起きる怪事件難事件を解決する、累計1000万部突破の「しゃばけ」シリーズ! 最新刊『あやかしたち』の刊行を記念して、表題作の「あやかしたち」を本日から特別公開いたします。

え、えぇぇ!? 「長崎屋」の離れに日の本中の妖も集まっちゃったってぇ!?  勝負に負けたら皆、追い出されちゃうの──? 皆の居場所を賭けた妖たちの大勝負の始まりだ!

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あやかしたち

あやかしたち

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「ぎゃっ」
 長崎屋の離れにいた鳴家やなりが、いきなり殴られ、部屋の隅へ吹っ飛んだ。一緒に居た若だんなは飛んで行くと、小鬼を抱え上げ、襲ってきた者の方へ振り返る。恐れを感じるより、ただただ驚いていた。
 若だんなの居場所である離れで、いきなり毛むくじゃらな者に襲われるとは、考えた事もなかったからだ。
「きょんげーっ」
「ぎゃーっ」
 鳴家達は裏返った声で、この世の終わりが来たかのうに騒ぎ出した。
 若だんなを突然襲ったのは、人にも似た何かで、あやかしに違いなかった。毛深く、つり上がった目が恐ろしい者は、若だんなの方へまた迫ってきた。
(私達を、また殴りつける気だ)
 そして若だんなには、現れた怪異から、逃げるすべがない。せめて小鬼達だけでも守ってやりたかったが、既に一匹、守り切れず殴られてしまっている。
(どうしよう、何が出来る?)
 天井へ逃がそうと思ったが、怖がっている小鬼は、若だんなにしがみつき離れない。とにかく小鬼を腕に抱き、いざとなったら影を見つけ、その闇へ落とそうと腹を固めた。
 その時だ。
 何と、離れにいた他の鳴家達が、必死に、毛むくじゃらの大きな妖へ組み付いた。だが小鬼達は戦うどころか、怪異の腕の一振りで、あっという間に飛ばされてしまう。
「ぎゃいーっ」
 小鬼がもの凄い悲鳴を上げると、毛むくじゃらが怖い顔で、更に腕を振り上げる。そして。
 そして、その時。
「若だんなっ」
 仁吉にきち佐助さすけが、別々の方から部屋へ飛び込んできた。すると妖は、振り上げていた腕を、そのまま仁吉の方へ振り下ろしたのだ。ただ、それは空を切り、仁吉が素早い反撃を、毛むくじゃらに喰らわせた。
「ぐわっ」
 短く声を出し、ひっくり返ったものの、怪異が伸びる事無く立ち上がったので、若だんなは魂消たまげた。仁吉の一撃は多くの妖を、倒すようなものに思えたからだ。
(この怪異、強い)
 声が出てくれなかった。すると毛むくじゃらな姿が、また若だんな達の方を向く。佐助の厳しい声が、部屋に満ちた。
「仁吉、こいつに遠慮は無用だっ」
 その声が聞こえた途端、仁吉は妖の方へ飛んだ。そして魂消る程物騒な拳を、問答無用で喰らわしたのだ。
「あ…」
 大きな体が部屋から飛び出て、塀の外へ消えてゆく。姿が見えなくなった時、若だんなは畳に両の手を突き、ようよう息を吐いた。ほっとして顔を上げると、兄や二人が、黒目を針のように細くし立っていた。