累計1000万部突破! 「しゃばけ」シリーズ最新刊『あやかしたち』一章まるごと試し読み③
「しゃばけ」シリーズ最新刊『あやかしたち』刊行記念&アニメ化記念特集
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江戸は通町にある廻船問屋兼薬種問屋「長崎屋」の病弱若だんな・一太郎と彼を見守る不思議な妖たちがお江戸で起きる怪事件難事件を解決する、累計1000万部突破の「しゃばけ」シリーズ! 最新刊『あやかしたち』の刊行を記念して、表題作の「あやかしたち」を本日から特別公開いたします。
え、えぇぇ!? 「長崎屋」の離れに日の本中の妖も集まっちゃったってぇ!? 勝負に負けたら皆、追い出されちゃうの──? 皆の居場所を賭けた妖たちの大勝負の始まりだ!
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河童と猫又と天狗が、突然、長崎屋と新参者、両方の妖らへ声を掛けた。たまたま縁があり、長崎屋で出会ったのだから、自分達が勝ち負けの判定をしてやろうと、三人は言ったのだ。
「争い事などやってはいけないと、ここにいる妖達へ、真っ当な事を言うのは簡単だ。だが新参の妖らは、止められても、長崎屋の妖に、勝負を挑んでしまいそうだ」
つまりどのみち、妖同士の戦いは行われるだろう。ならばどちらが勝ったのか、きちんと勝敗を見極める者が必要だろうと、杉戸は口にする。
「もちろん、判定人など要らないって話なら、我ら河童は降ります。でも勝ち負けがはっきりしない勝負は、揉め事が続くだけですよ」
何しろ、他にも長崎屋へ来たい妖が、結構居るようなのだ。
「結果は、はっきりさせたいでしょう。ならば、我らに頼る方が良いと思います」
離れの内で兄や達が、低く怖い声を出した。
「杉戸さん、離れへ入り込んだ妖どもの言うままに、勝負をしろと言うんですか?」
「もちろん争い事など、せずにすむなら目出度い事です。でも新参達は、もう始めてますよ、勝手に」
その言葉が終わらない内に、杉戸はさっと身を翻し、巻き込まれる寸前で、青い拳を避けた。青鬼は、文句を言った佐助を殴り飛ばし、勝利と共に、長崎屋での暮らしをもぎ取ろうと考えたに違いない。
しかしだ。
「あ、佐助が怒ってる」
若だんなが両の眉尻を下げた時、佐助は二度目の拳を、片手で受け止めた。そして、仁吉の戦いを覚えていたからだろう、遠慮の無い、もの凄い一発を青鬼に見舞う。青鬼は部屋から飛び出て、長崎屋の庭で伸びてしまった。
「おおっ、あっという間に勝った。さすがは我らの佐助さんだよ」
ひゃひゃひゃと笑う、貧乏神の満足げな声が聞こえる。すると。
「これはきっぱり答えが出たな。うむ、長崎屋の、佐助さんの勝ちだ」
天狗の六鬼坊がそう判じ、判定人を立てると決まってもいない間に、最初の勝敗が示されてしまう。なし崩しに始まった戦いを止めようと、若だんなは新参の妖達へ言ってみた。
「さっき比々さんは私へ、頭を下げたよね。仲直りが出来るかと思ったのに、直ぐに、長崎屋の皆と戦う話になった。あんな事を言われたら、長崎屋で一緒に居るのは無理だよ」
無茶は止めておくれと、若だんなは言ったのだ。長崎屋と他の怪異達はこれまで、淡いが、良き関係を続けてきていた。
「出来たら比々さん達も我々と、そういう付き合い方をして貰えないだろうか」
しかし鉄鼠は落ち着いた顔で、怖い事を言ってきた。
「そのやり方では、我らはこの離れに住めないのでは? 長崎屋の妖で強そうなのは、兄やと呼ばれてる二人くらいです。我らは勝つことが出来ます。だから承知出来かねます」
赤鬼が、余裕の顔で頷いている。そんな妖達を、六鬼坊が強い眼差しで見つつ言った。
「あくまでも勝負にこだわるのなら、勝ち負けの結果も受け入れるのだな? 万が一負けても、勝負のやり方が気に食わないとか、もう一回やり直そうとかいう言葉は、この天狗が承知せぬぞ」
つまり負けたら長崎屋から去り、江戸からも消えて貰うと、六鬼坊は言ったのだ。


