累計1000万部突破! 「しゃばけ」シリーズ最新刊『あやかしたち』一章まるごと試し読み④
「しゃばけ」シリーズ最新刊『あやかしたち』刊行記念&アニメ化記念特集
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江戸は通町にある廻船問屋兼薬種問屋「長崎屋」の病弱若だんな・一太郎と彼を見守る不思議な妖たちがお江戸で起きる怪事件難事件を解決する、累計1000万部突破の「しゃばけ」シリーズ! 最新刊『あやかしたち』の刊行を記念して、表題作の「あやかしたち」を本日から特別公開いたします。
え、えぇぇ!? 「長崎屋」の離れに日の本中の妖も集まっちゃったってぇ!? 勝負に負けたら皆、追い出されちゃうの──? 皆の居場所を賭けた妖たちの大勝負の始まりだ!
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「あのね、既に戦いの火蓋は切って落とされてる。こうなったら、今更止めようと言っても、無理だよね」
ただ、長崎屋の離れは若だんなの住まいなのだ。誰が住むのか、他の者が決めるという話には納得がいかないと、新参と古参、両方の妖達に若だんなは告げた。
「私の住まいを賭けて勝負をするなら、私の意向もくみ取って貰いたい」
「ほお、若だんなは、どうしたいんだ?」
比々が、眉を顰めて問う。若だんなは一つ咳をしてから、自分の考えを伝えてみた。
「どうやって勝負するかを、私が決めたい。長崎屋に住む者なら、長崎屋で、役に立って欲しい」
離れの妖達は何人も、長崎屋で奉公人になっているのだ。貧乏神に付喪神、兄や達二人も店で働き、長崎屋を支えてくれている。いや、おしろや鈴彦姫、場久なども、離れの買い物をする時など、さっと算盤をはじき、金銭の出し入れをしてくれるのだ。
すると鈴彦姫が、当たり前ですと話した。
「夕餉代に菓子代、離れの買い物は、集まる人数が多い分、払う額も大きくなりますから。無駄遣いは駄目です」
若だんなは深く頷くと、長崎屋は、商人の店だから、力が強いだけでは、住む事は叶わないと告げた。
「それで次の勝負だけど、算盤の対決とする。貧乏神だって、付喪神だって、算盤を使ってるんだ。ごほっ、新参の妖達も、その腕前を見せてもらいたい」
「あのっ、そのっ、算盤とは、変わった勝負ではないのか?」
新参妖達が狼狽えている。
「まさか、算盤の腕で競えと言われるとは」
比々は、細かい事が苦手なのか、己の手をじっと見てから、顔を強ばらせる。
(やはり算術は苦手か。勝負が流れて、長崎屋の皆が、ほっと出来るかな)
大座頭や百々爺も、首を振っていた。
しかしだ。新参の妖達はざわつきはしたが、直ぐに集うと、一人の妖を見つめたのだ。
「算盤で競うとなれば、鉄鼠しか頼りはおるまい。頼むぞ」
「我かぁ。まあ、仕方が無いだろうな。我は元僧ゆえ、算盤くらい扱えるからな」
力の勝負以外をこなす妖は、新参達の中にもいたのだ。鉄鼠は手を上げた。
「我が算盤勝負を受ける。相手は誰だ?」
すると、仁吉が思わぬ妖の名を出してきた。
「屛風のぞき、お前さんがやってくれ。奉公してからずっと、算盤を入れてるだろ。結構、得意だと思うぞ」
同じ薬種問屋で奉公している仁吉にそう言われて、屛風のぞきは一瞬、嬉しげな顔つきになった。日頃の働きを、認められたからだ。ただ。
「でもさ、元坊さん相手に算盤を争うのは、ちょいと怖いかな。あたしは若だんなや仁吉さんより、算盤が遅いと思うんだ」
仁吉が出た方が良かろうと、屛風のぞきは言ったが、その言葉を場久が止めた。
「仁吉さんは、力勝負も出来ますから、ここは温存しておきたいですね。あたしは、御店で奉公している屛風のぞきさんか、金次さんが良かろうと思います」
やはり奉公していて、毎日算盤を使っている者は、強いという。だが金次を出すという案に、二階屋からやってきていた火幻は頷かなかった。
「金次さんは、もっと変わった戦いでも、勝てそうです。だから算盤は、屛風のぞきさんに決めましょう」
「……何だか、急にあたしは、弱い気がしてきた。誰か、助けて欲しいというか」
「自分を助けるのは、自分だ。屛風のぞき、期待してるからな」
仁吉からそう言い切られ、皆に前へ押し出されると、屛風のぞきは一寸、唇を引き結んだ。離れの部屋の真ん中に、二つの文机が向き合って据えられると、妖達が集まってくる。








