累計1000万部突破! 「しゃばけ」シリーズ最新刊『あやかしたち』一章まるごと試し読み⑤

「しゃばけ」シリーズ最新刊『あやかしたち』刊行記念&アニメ化記念特集

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江戸は通町にある廻船問屋兼薬種問屋「長崎屋」の病弱若だんな・一太郎と彼を見守る不思議な妖たちがお江戸で起きる怪事件難事件を解決する、累計1000万部突破の「しゃばけ」シリーズ! 最新刊『あやかしたち』の刊行を記念して、表題作の「あやかしたち」を本日から特別公開いたします。

え、えぇぇ!? 「長崎屋」の離れに日の本中の妖も集まっちゃったってぇ!?  勝負に負けたら皆、追い出されちゃうの──? 皆の居場所を賭けた妖たちの大勝負の始まりだ!

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あやかしたち

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 一日目の勝負が終わった後、勝負は明日へ繰り延べとなり、新参妖達が去る。離れで夕餉を取る事になり、いつもの鍋に決まった。そして妖達は、気合いを入れて作った。
 つまり、これからも続く新参との勝負に、気が行ってしまい、鍋を作る方は、おろそかになったのだ。それで一番入れた具材は、気合いだぁ、という言葉になってしまった。
 ただ河童達や若だんなは、妖達が食材へ目を向けていないのを知り、そっと夕餉に気を配った。鍋は、間違いが起きない水炊みずたきにすると決め、気合いの他に昆布こんぶを入れて、猫又の虎特製の付けだれを添える事になった。
 よって適当な魚と野菜を、これまた適当に切って、鍋へ放り込んだだけだったのに、何とか美味しい夕餉が出来上がった。
 胡麻ごまだれと、さっぱりした柚子ゆず入りのつゆを試しつつ、長崎屋の夕餉はいつも美味いと、杉戸が褒めている。猫又と河童と天狗は、沢山食べてご機嫌だったが、長崎屋の妖達は、今後の事を話し、眉間に皺を寄せていた。
 鉄鼠と屛風のぞきの算盤勝負は、六鬼坊達から、引き分けの判定を受けていた。鉄鼠の方が先に、計算を終えたが、間違えた所があり、今回は痛み分けになったのだ。
「ごほっ、厳しい事になってきたね」
 若だんなの言葉に、長崎屋全ての妖が頷く。新参の妖達との勝負は、まず佐助と小鬼が勝ち、屛風のぞきの引き分けを含めても、はじめは長崎屋の妖が勝っていた。
 だが算盤の勝負が終わった後、事はあやうい明日へと転がり始めた。若だんなは、屛風のぞき達の勝負に続き、次のお題を告げた。あれは良きお題でしたと、佐助が褒めている。
「次の勝負は、店からお客へ渡す、断りの文を書く事でした。文を書く事も、店の奉公人にとって大事な事です」
 その勝負には、新参妖から五徳猫が出て、長崎屋のおしろと勝負する事になった。猫同士の戦いゆえ、おしろも気合いを入れて、文を書いた。
 おしろは三味線しゃみせん師匠ししょうだから、文で、頼まれ事を断る事があるという。よって大丈夫、ちゃんと書けると言い、長崎屋の皆も安心していた。ところが。
「ああ、情けない。あたし、勝負に負けちゃいました」
 ここで火幻が、何故だか鍋から目刺めざしを取り出し、天井を向きつつ話した。
「五徳猫、思いがけない程、文が上手かったですね。勝負はどちらかが負けるもの。おしろさんは、運がなかっただけですよ」
「いえ、正直に言うと、あたしの敗因は分かってます。あたし、上手く断る事ばかりに気をつかって、店から送る文だって事を、余り考えてなかったんです」
 おしろは三味線の師匠だ。つまり、そういう立場で書く断りの文と、注文を受けられないと告げる文は、書き方が違うのだ。五徳猫は、どこかの店で働いた事があったらしく、そこを上手く書きこなしていた。
「ああ、これで、新参と長崎屋の妖対決は、差は一つだけです」
 猫又は飯碗を置いて、頭を抱えた。
 負けが込むと、明日勝負をする誰かを緊張させてしまうと、おしろは考えていたのだ。こうなると、互いの技量を承知していない分、この先どうなるのか見通せない。
「新参者、さっさと勝負を、決めにくるだろうな。夕餉の刻限になったのに、若だんなに勝負を続けようと言って、兄やさん達を怒らせてたくらいだ」
 ただ勝負の続行は、判定人達が止めた。無理をさせて、もし若だんなが病になったら、勝負に勝とうが負けようが、長崎屋から追い出されると告げたのだ。