累計1000万部突破! 「しゃばけ」シリーズ最新刊『あやかしたち』一章まるごと試し読み⑥

「しゃばけ」シリーズ最新刊『あやかしたち』刊行記念&アニメ化記念特集

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江戸は通町にある廻船問屋兼薬種問屋「長崎屋」の病弱若だんな・一太郎と彼を見守る不思議な妖たちがお江戸で起きる怪事件難事件を解決する、累計1000万部突破の「しゃばけ」シリーズ! 最新刊『あやかしたち』の刊行を記念して、表題作の「あやかしたち」を本日から特別公開いたします。

え、えぇぇ!? 「長崎屋」の離れに日の本中の妖も集まっちゃったってぇ!?  勝負に負けたら皆、追い出されちゃうの──? 皆の居場所を賭けた妖たちの大勝負の始まりだ!

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あやかしたち

あやかしたち

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「やれ、無茶はいけませんな」
 声の方へ目を向けると、新参者から少し離れた庭の奥に、顔を知らない三人が立っていた。すると金次が、ぼそりとつぶやく。
「どう見ても、全員妖だね」
 一人は人の姿だったが、隣の者は半分透けていて、幽霊だと分かる。もう一人は角一つの鬼で、三人はまとまって、長崎屋へ入り込んできたのだ。人に見える者が、まずは口を開いた。
「われは絹狸きぬたぬきと申します。ええ、狸の妖ですな。その、我らはこの長崎屋の噂を聞いて、ここに住もうとやってきた者でして」
 絹狸の話し方は絹のように滑らかで、やんわりとしていた。だがその顔つきは、あまり大人しそうではない。
「ところが長崎屋には、一足先に来た妖達が、おったようで。長崎屋で過ごす立場を賭け、先に勝負を仕掛けたようで、驚いております」
 その上長崎屋の若だんなは、なんと、病で伏せっていたのだ。
「なのに、先に来ていた妖達は、勝負を止めようとはしていない。酷いですな」
 絹狸は、額に手ぬぐいを載せられ、横になっている若だんなへ目を向け、涙をぬぐ素振そぶりをすると、新参者達を責め始める。
「うるさい事を言っている妖は、鬼や比々ですか。この離れで暮らすのに相応しいとは、思えません。ええ、駄目ですとも」
 そして絹狸は、自分達こそが長崎屋の仲間に向いた者だと、売り込んできたのだ。
「比々達だが、今日、勝負をしたいようです。ならば我らが代わりに戦って、若だんなを助けましょう」
「はあ? どこの誰かも分からない絹狸とやらが、勝手に割って入ってくるな」
 鉄鼠が、怖い顔を絹狸へ向ける。すると金次が離れの縁側えんがわで、笑い出した。
「あのさ、突然長崎屋へ来て、好き勝手な勝負を押しつけてきたのは、比々や鉄鼠、お前さん達だろう。それにあたしらは今も、比々達が何者なのか、よく分かってないよ」
 まあ妖なのだろうが、それならば何故、後から来た別の妖達を嫌うのか。
「お前さん達は戦いと、勝負の結果が全てなんだよな。そしてさ、今日は長崎屋の者と戦えないんだ」
 若だんなは、休まねばならない。長崎屋の妖達は、店で働き、看病をするのだ。戦っている暇は、ない。