累計1000万部突破! 「しゃばけ」シリーズ最新刊『あやかしたち』一章まるごと試し読み⑧
「しゃばけ」シリーズ最新刊『あやかしたち』刊行記念&アニメ化記念特集
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江戸は通町にある廻船問屋兼薬種問屋「長崎屋」の病弱若だんな・一太郎と彼を見守る不思議な妖たちがお江戸で起きる怪事件難事件を解決する、累計1000万部突破の「しゃばけ」シリーズ! 最新刊『あやかしたち』の刊行を記念して、表題作の「あやかしたち」を本日から特別公開いたします。
え、えぇぇ!? 「長崎屋」の離れに日の本中の妖も集まっちゃったってぇ!? 勝負に負けたら皆、追い出されちゃうの──? 皆の居場所を賭けた妖たちの大勝負の始まりだ!
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7
新参者達の勝負は続いた。
「次は重い荷の、荷揚げ勝負です。長崎屋は、廻船問屋でもありますからね」
六人の妖が競った。勝ったのは、比々であった。
「長崎屋は、薬種問屋でもあります。薬を作る薬研という道具で、こちらが言う通りに、薬種を潰して下さい。薬作りの基本です」
五人の妖が試し、結果は仁吉と六鬼坊が、二人で判じた。
「今回は、薬種の見分けをして下さい。薬種問屋で暮らすなら、出来なくては困ります」
長崎屋には、数多の薬種が揃っているのだ。この回は、三人で競った。
「次は、両替の確かさを見ます。何人でやりますか?」
すると、一人しか進み出て来なかったので、これでは勝負にならないと、虎が顔を顰める。
「新参妖達は、戦って、勝ち抜きたくないのか? どういうことかね?」
長崎屋は新参者の妖らに押される形で、挑戦を受けたのだ。なのに、肝心の勝負をする妖が集まらないというのは、長崎屋に対し無礼ではないのか。猫又の虎はそう言って、怖い目で新参達を見まわした。
すると木魚達磨が、戸惑うような口調を、判定人や長崎屋の皆へ向けてくる。
「いや、それがな。気がついた時には、長崎屋へきていた仲間が、減っていたのだ」
実は、勝負を行うたびに、妖らは他から、声を掛けられているのだ。
「先程は両国の小屋から、赤鬼、青鬼の二人に、働かないかと話が来てた。相撲に出て欲しいそうだ」
そこそこ良い金が出るとかで、鬼達はぐっと興味を引かれていた。人の姿には既に、何とか化けられる。暮らす為の長屋や、人付き合いのやり方は、小屋が面倒をみてくれるらしい。
「長崎屋で暮らすには、勝負で勝たなきゃならないし、競争相手も増えてしまった。両国の方は歓迎されてるから、そっちへ行きたいと言うんで、止められなかったのだ」
算盤で活躍した鉄鼠など、もっと早くに、働かないかと声を掛けられていた。
「三つの店から、来てくれと言われてたな。しかもどこも、妖が関わってる店で、安心して働けるとか」
鉄鼠は木魚達磨が羨ましがっている間に、長崎屋から離れていたのだ。
「お、おやまあ」
一度は新参者と勝負をしたおしろが、目を見張っている。
「もしや鉄鼠さんは、虎さんの知り合いのお店で、働く事になったんですか? あら、やっぱり猫は怖いからと、別の店へ行ったんですね。まあっ」
おしろは大きく息を吐いた。新参妖は、離れに、何としても居たくて庭へ入り込んできたと、おしろは思っていたらしい。だが。
「皆さん、そこまで長崎屋にこだわってるわけじゃ、なかったんだわ。ええ、他の妖達もかなり、この庭から居なくなっているもの」
あっさり別の場所へ移れるのなら、どうして長崎屋の妖達を追い出そうとしたのかと、おしろは声を震わせる。
「別の所でもいいなら、奪い取りに来たりしないでっ。あたし達にとって、この離れは、毎日の暮らしそのものなんですよ。若だんなの事だって、大事に思ってるんです」
だから長崎屋にいるのだ。ここがおしろの居場所だった。小鬼達や屛風のぞき、いや長崎屋の妖全てのいるべき場所なのだ。
「なのに。ああ、腹が立ってきたわ」
おしろの声が響き、出て行かなかった新参達が、下を向く。
ここで若だんなが、また、げほげほと語り始めた。だが、何を言っているのか分からず、判定人の三人や新参達、長崎屋へ来たのが遅い火幻医師が首を傾げている。
すると、若だんなのげほげほに慣れている、小鬼や屛風のぞきが、言葉を皆へ伝え始めた。
「ごふっ、けほけほ……げふふっ……」
「では、この屛風のぞきが、若だんなの言葉を伝えるぞ。というか、何でこれくらい分からないんだ? 若だんなが寝込んだ時、話せなくなるじゃないか」








