初めて書いた小説でデビュー! 森見登美彦氏絶賛の驚異の新人作家・明里桜良が語る心の風景【インタビュー】

「日本ファンタジーノベル大賞」特集

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 体調を崩して仕事を辞め、初めて書いた小説で「日本ファンタジーノベル大賞2025」を受賞し、40歳で作家デビューを果たした明里桜良さん。「私がファンタジーを書きながら掴んできた感覚を共有できる(森見登美彦さん)、「振り幅の広さ、現実の中に潜んでいる幻想性の豊かさを的確に感じた」(ヤマザキマリさん)、「公務員と地霊という組み合わせが面白い」(恩田陸さん)と、選考委員からも大絶賛を浴びました。

 デビュー作『ひらりと天狗 神棲まう里の物語』は、日本の田舎を舞台に、新米地方公務員のひらりと、人の言葉をしゃべる動物や天狗、神様たちの交流を描いた、ユーモラスでチャーミングな新感覚ファンタジーです。

 なぜ田舎を舞台に、そして公務員を主人公に小説を書いたのか? 作品への思いを紐解きました。

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ひらりと天狗

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―『ひらりと天狗 神棲まう里の物語』が刊行されましたが、率直なお気持ちを聞かせてください。 

 たいへん光栄ですし、ただただうれしいです。「日本ファンタジーノベル大賞2025」の最終候補に残ったというお知らせをいただいてからずっと夢でも見ているような気分でしたが、本が出版されて実物を手にしてみて、ようやく現実のものと思えるようになってきました。 

―本書が初めて書いた小説だったとのことですが、書き始めるきっかけはどのようなものだったのでしょうか。 

 子どもの頃から、本を読むのが好きというより息をするのと同じくらい当たり前の感覚だったので、いつか自分も小説を書きたいと思っていましたし、いずれ書くだろうという確信のようなものはありました。ですが、一方で、書けるわけがない、という気持ちもあって、書くことを避け続けてきました。書けなかったらそこで諦めてしまいそうで怖くて。ただ、学生の頃、一度だけ書こうとしたことがあります。強い信念を持って向き合ったわけではなくて、文章を書くのは好きだからもしかしたら何か書けるかも、と、ふわっとやってみたんです。でも、全く、何にも書けませんでした。ああやっぱり無理だよね、と思ってその場は終わりました。ただ、完全に諦めることもなく、心の片隅で、いずれ書きたいという思いは燻り続けたままになりました。 

 その後は就職して十数年ほど働いていたのですが、体を壊してしまって、仕事を辞めてしばらく療養に専念することにしました。そこで、回復して次の仕事を探すまでには、時間があるなと。だったらその間に、今度こそ逃げずに小説を書いてみよう、と書き始めました。 

―『ひらりと天狗』は地方公務員や、いわゆる「田舎」と呼ばれるような地方自治体、そこで暮らす人々の息づかいや生活がとてもリアリティを持って、ユーモラスに描かれているところに魅力に感じました。こういった舞台を設定した理由について教えてください。 

 田舎を書きたいという思いは最初からありました。田舎の持つ歴史や文化や物語の蓄積には、計り知れないものがあります。時代によって変容しながら地域ごとに受け継がれてきたそれらは宝の山のはずですが、明文化されることもなく、それを共有する集団以外には知られることもないまま、人口減少によってどんどん失われつつあります。それはものすごくもったいないことではないかと。ですから、時の流れの中で薄れ消えていってしまうであろうその姿を少しでも今に留めてみたい、という動機からこの話が始まったように思います。 

 主人公を市役所職員にしたのは、地方の山奥では若い女性の就職先は限られており、公務員はその数少ない選択肢のひとつだから、自然とそうなったという感じです。ですから、公務員という設定が面白いと評価していただけるとは思いもよりませんでした。主人公を市役所職員にしたことで、行政という広い視野から現代の田舎の姿を描くことができたので、結果としてこの設定でよかったです。