タイプロ、妄想、ルッキズム――アイドルについてオタクが知っているのは、結局顔だけ⁉ 『アイドルだった君へ』刊行記念対談 前半
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老若男女が「推し」を持つようになった現在、職場その他で推しについて語っている人を横目に見ながら、なんとなくの疎外感を覚えている人もいるのではないか。
一体、彼ら彼女らは何をそんなに嬉しそうに盛り上がっているのか―――そんな人の目にこの対談はどう映るだろうか。オタクやアイドル本人の心理を描いた短編集『くたばれ地下アイドル』でデビューした作家、小林早代子さんと、ブロガーで旧ジャニーズ事務所時代からSTARTO ENTERTAINMENTのタレントを10年以上見守ってきた、推し活界のトップランナーであるブロガー・あややさん。
コロナ禍、ジャニーズ事務所問題、タレントたちの独立と激動の数年間にオタクたちはどう変わったのか。彼女たちはいま何を感じているか。
互いの推しが事務所を退所して……
小林 私のデビュー作『くたばれ地下アイドル』刊行時にあややさんと対談させていただきましたが、この数年でオタクとアイドルの距離感は変わりましたよね。
あやや あの時は、STARTO ENTERTAINMENT(以下、STARTO)の前身、ジャニーズ事務所のアイドル好き同士、彼らの魅力と当時の推し活について大いに盛り上がりましたよね。あれ から7年、確かに様々な変化がありました。コロナ禍でライブに行けずアイドルに会えない時期があり、我々オタクの推し活はSNSが主戦場になりました。
小林 あの本が文庫化されたので(『アイドルだった君へ』に改題)、久しぶり に読み直しながら我が身を振り返ると、2年半ほど前にアメリカに転居してからより一層、推し活にSNSとyoutubeがマストになりました。ただ、日本との物理的な距離がアイドルに対する熱意やオタクを続けるモチベーションを変えたのか、次第にネットで情報を追うだけでは物足りなさを感じるようになり、おまけに当時の私の推しでジュニア(デビュー前練習生)だった髙橋優斗さんが事務所を退所してしまい……。あの頃は心が少し離れました。あややさんの当時の推し、北山宏光さんも、もう事務所にいませんよね。彼が退所した時、どういう心境でしたか。
あやや 想像していなかった未来がきたなと……。北山さんはKis-My-Ft2のメンバーとして2011年にメジャーデビューしてから順調に知名度をあげていましたが、2023年に事務所を退所し、今は別の事務所でアイドルをしています。グループアイドルとして皆と夢を叶えていくと信じていたんですけどね……。
「ジュニア担」(ジュニア推しの総称)だった小林さんの想いを引き継いだわけではありませんが(笑)、今は、ジュニア内に新しくできたKEY TO LITの猪狩蒼弥さんを応援しています 。
小林 皆さん、新しい道を歩み始めていますね。私の推しだった髙橋さんは2024年秋に事務所を退所後、「横浜バニラ」というギフトスイーツ事業を手掛ける会社を起業しました。第一弾商品として販売した「塩バニラフィナンシェ」は横浜発のギフトスイーツとして大ヒットしています。
あやや 私、そのフィナンシェ食べましたよ。美味しかった!
小林 経済誌に経営者としての髙橋さんのインタビューが掲載されるほどビジネスを成功させた彼の商才はすごいと思うものの、アイドルだった彼と結びつかないんです。日本を離れているということもあり、実はまだ、私は食べていないんです。あややさんがうらやましい……。いつかフィナンシェを食べられたら彼への気持ちに区切りがつくかもしれません。


