特別展「いきもの超ワールド展」監修・並河洋先生インタビュー クラゲは花のようなもの 海のいきものたちの不思議な進化に迫る
特別展「いきもの超ワールド展 国立科学博物館×ダーウィンが来た!」特集
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私たちは、ヒトの体のつくりを「普通」だと思いがちです。けれどもいきものの世界で、それは決して当たり前ではありません。肛門がないイソギンチャク、背中に消化管をもつエビ、岩に張り付いて一生を過ごすサンゴ――。地球には、私たちの常識では測れないいきものたちが数多く暮らしています。
特別展「いきもの超ワールド展 国立科学博物館×ダーウィンが来た!」(以下、「いきもの超ワールド展」)では、そんないきものたちの生き残り戦略を「五感」「エネルギー補給」「サイズ」「移動」「集団」「命のバトン」という6つのテーマで紹介しています。
今回は、「いきもの超ワールド展」の監修者であり海の無脊椎動物(背骨をもたない動物)を研究する、国立科学博物館(以下、科博) 動物研究部 海生無脊椎動物研究グループ長 並河洋先生に、海の無脊椎動物たちの多様な姿かたちや生活のようすからみえてくるいきものたちの興味深い世界についてお話を伺いました。(聞き手:関瑶子、ライター&ビデオクリエイター)
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――並河先生は「刺胞動物」の研究をされていると伺いました。刺胞動物とはどのようないきものですか。
並河 刺胞動物は「刺胞」を持つ動物の仲間のことです。この動物には、見た目や暮らし方が大きく違うのですがサンゴやイソギンチャク、クラゲが含まれています。この動物は、一部は淡水にもいますが、ほとんどが海で生活しています。
なお、刺胞は、毒針を収めた小さなカプセルのような構造のもので、獲物を捕まえたり、外敵から身を守ったりするために使われます。
海でクラゲに刺された経験がある人もいるかもしれませんが、あれは皮膚にクラゲの刺胞が打ち込まれた状態なのです。
刺胞動物は、サンゴやイソギンチャクが属する「花虫綱」、ミズクラゲなどの大きなクラゲが属する「鉢虫綱」、ヒドラの仲間が属する「ヒドロ虫綱」などに分けられていますが、私が特に関心を持っているのがヒドロ虫です。

――ヒドロ虫、初めて聞く名前ですが、どんな特徴をもったいきものなのでしょうか。
並河 ヒドロ虫最大の魅力は、その変わった暮らし方にあります。
無性生殖、つまり自分の分身をつくる方法で増えた個体(以下、個虫とします)が互いにチューブ状の組織などでつながり、一つの大きないきものとして暮らすことを「群体」と呼びます。ヒドロ虫だけでなくサンゴなども群体をつくりますが、ヒドロ虫にはちょっと変わった群体をつくるものがいるのです。
群体を構成する個虫は、すべて分身ですのでクローン、つまり同じ遺伝子を持っているわけです。したがって、オベリア属の一種のようにひとつの群体は同じ姿かたちや役割を持つ個虫で構成されているというイメージです。しかし、ヒドロ虫の中には、個虫が姿かたちや役割をかえて分業している群体をつくる種もいるのです。例えば、カイウミヒドラのように同じ群体の中で餌を食べる担当、卵や精子をつくる有性生殖担当、群体を守る担当などに個虫それぞれ分業しているものがいるのです。
「どのような仕組みで同じ遺伝子をもっている個虫の間に役割分担ができるのか?」
この疑問こそ、私がヒドロ虫に興味をかきたてられる理由です。
ヒドロ虫がどのようにして個虫が分業する群体をつくるようになったのかについてはまだよく分かっていませんが、ヒドロ虫の進化を考える上では大変興味深いことです。今後の研究に期待です。



