【試し読み】960万部突破!「しゃばけ」シリーズ最新作『いつまで』①

【試し読み】960万部突破「しゃばけ」シリーズ最新作『いつまで』

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 長崎屋ながさきやに、厄災やくさいが迫っていた。
 それはある日、西からやってきたのだ。

 江戸は通町とおりちょうにある長崎屋の離れで、若だんなは、薬を作るためのからくりを考えていた。
 三日前まで熱が出ていたので、若だんなはここ何日か、離れから出してもらえなかった。それで離れにもっていても出来ることを、探していたのだ。
 にいや達や両親は、若だんなが少し働いたら、やまいに取りかれ、ぐに重くなって、死んでしまうと信じていた。そして若だんながなくなったら、江戸がほろんでしまうと言うのだ。
「私一人死んだって、江戸は大丈夫だよ。それより、ずーっと離れに居続けたら、私はその内、離れのたたみになってしまいそうだ」
 若だんなは兄や達へ、そううったえてみたが、やはり表へ出してはくれない。
 長崎屋は、祖母のおぎんが人ならぬ者であったため、あやかしと縁が深かった。よって、おのれも人ではない兄や達は、病以外のわざわいも口にしてくる。
「空から、だいじゃが飛んできたら大変です。鬼が襲って来たら、たなおもてが危ない。若だんな、離れで遊んでいて下さい」
 しかし遊ぼうとしても、の相手をしてくれる妖達は今、離れにいない。つくがみびょうのぞきや貧乏神のきんは、何と廻船問屋かいせんどんや薬種やくしゅ問屋、長崎屋で奉公しているのだ。
「いいなぁ、私もせっせと店表で働きたい」
 若だんなは仕方なく、長火鉢のかたわらで、次の一手を案じた。一人で出来て、しかも、ただの暇つぶしではなく、役に立つ事が出来ないか、真剣に考え始めたのだ。
「さて、そんな都合の良いこと、あるかしら」
 すると小鬼こおに達が、影から出て来てひざに乗り、あると言い出した。この世には、一番大事な事が、いつも存在するらしい。
「きゅい、若だんな。お菓子かし、作って」
鳴家やなりや、離れは台所じゃないから、無理なんだ。でも、もし今日のおつが大福だったら、火鉢で焼くからね」
「若だんな、鳴家は、お八つまで待てない。お菓子が出てくる、からくり作って」
「おや、そんな面白い事、考えてたのか。鳴家はすごいね」
 若だんなが真剣にめると、小鬼達は得意げに胸をらし、何匹かが膝から転げ落ちた。若だんなはここで、ぽんと手を打つと、離れでも出来る事を思いついた。