シリーズ累計1000万部突破!「しゃばけ」シリーズ最新刊『おにがわらう』所収「てあそび」試し読み①

累計1000万部突破!「しゃばけ」シリーズ最新刊『おにがわらう』刊行記念特集

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江戸は通町にある廻船問屋兼薬種問屋「長崎屋」の病弱若だんな・一太郎と彼を見守る不思議な妖たちがお江戸で起きる怪事件難事件を解決する、累計1000万部突破の「しゃばけ」シリーズ! 

最新刊『おにがわらう』の刊行を記念して、「てあそび」を本日から特別公開いたします。

最近の異変はすべて狐のせい―。
妙な噂が流れ、己まで人に襲われたと化け狐の赤月が若だんなに訴えてきた。その上寛朝の弟子・秋英は大怪我を負い、武家屋敷の下男が死体で発見された。若だんなと妖達にある疑念が生まれた矢先、新たな訪問者が…。

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おにがわらう

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 気がつくと江戸で、とんでもない異変が続いていると、うわさが走っていた。
 一天いってんにわかにかき曇ると、突然大雨が降り、一寸いっすんの後には晴れたと、よみうりが書き立てたのだ。
 よろずの魚が、何かに追われたかのように、川を遡上そじょうした事も伝えられた。町の皆は、たも網どころかたらいまで使い、魚を捕まえまくった。
 江戸のど真ん中に、何かから逃げるいのししの群れが現れ、人に突進して怪我をさせたので、ぼたん鍋にされてしまった。
 たたりが山のように発生したとの噂で、厄災退散やくさいたいさんを願い、僧と神職と占い師が、突然忙しくなった。
「他にもさ、武家ぶけ達が急に不機嫌になって、り合いを始めたとか、言われてるよ。太平たいへいの世なのに、通りの真ん中で真剣勝負を始めたとさ」
 長崎屋ながさきやの離れでは、付喪神つくもがみ屛風びょうぶのぞきが、を打ちながら、最近起きている珍事ちんじわかだんなに伝えていた。若だんなは何故だか、再び麻疹はしかかかってしまったので、ここ一月枕が上がらず、世間の話に追いつけていないのだ。
「この調子だと、これからもりずに、麻疹に罹る気がする。若だんな、少しは用心してくれ」
「屛風のぞき、麻疹は治ってるし、何度も罹らないよ。私は何度か、罹ってるだろうって? そうかもしれないけど」
 するとここで、小鬼こおに鳴家やなり達がわらわらと現れ、若だんなの膝に登ると、若だんなの麻疹は三度目だと、皆で言い切った。そして覚えていない屛風のぞきより、小鬼達の方が立派だと言ったのだ。
 世間で起きた話だとて、もっと沢山承知しているという。
「きゅい、狐、人に怒ってるって。屛風のぞき、それ、知らなかった」
「きゅべ、勝負に負けた人、いたって。鳴家詳しい」
「うるさいね。鳴家達は黙って、菓子でも食べてな」
 屛風のぞきが睨むと、小鬼らは許しが出たと言って、屛風のぞきのおつを食べてしまう。小鬼を怒っている間に、若だんなが碁盤へ良い手を打ったので、屛風のぞきは頭をかかえた。腹いせに、団子を食べている小鬼を、指で弾いて転がしたとき、若だんなのにいやで、手代てだいでもある仁吉が新たなお八つを菓子鉢に入れ、廊下に現れてくる。
 そしてその後ろには、珍しくも狐達が大勢したがっていたので、若だんなが首をかしげた。
「おや、いらっしゃい。今日は、お初に会うぎつねもいるね」
 仁吉にきち饅頭まんじゅうの入った木鉢を、若だんなの近くに置き、かたわらに座ると、狐達が若だんなの向かい側にずらりと並ぶ。その内の一匹が、額にこぶを作っていたので、若だんなが大丈夫かと問うたところ、赤毛のその狐が目から大粒の涙を流した。