【試し読み】恋愛小説の名手・唯川恵による修羅場の恋愛学『男と女』③
恋愛小説の名手・唯川恵による令和を生き抜く修羅場の恋愛学 『男と女』(新潮新書)特集
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他人の男を奪い続けて20年、何不自由ないのにPTA不倫、経済力重視で三度離婚……。『男と女―恋愛の落とし前―』は恋愛小説の名手である直木賞作家・唯川恵さんが、36歳から74歳まで12人の女性の実話を元に執筆した初の新書です。
「不倫はすることより、バレてからが本番」「大人の恋には大人の事情があり、責任がある」「恋愛は、成功と失敗があるんじゃない。成功と教訓があるだけだ」などの珠玉の名言で、多様な恋愛を厳しく一刀両断。冷徹さの中にも愛が潜む唯川さんの言葉は、人知れず悩みを抱えている大人の心に突き刺さります。
恋愛だけではなく、人生を生き抜くヒントに溢れた、令和の新バイブルから、「はじめに」と「第3話 恋愛関係の基本は人間関係である──仕事はできるが恋には幼稚な40歳」を期間限定で試し読み公開します。
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「さすがに、もう不倫はこりごりだと思いました。あんな男のために1年半も時間を無駄にしたのがほんと悔しい」
言っておくけれど、それは男のせいだけでなく、自分のせいであることも忘れてはいけない。
「その頃には私も27歳になっていたので、合コンに積極的に参加するようにしました」
それは結婚を意識し始めたということ?
「そうです。ぼやぼやしてたらあっという間に30歳になってしまいます。やはり30はひとつの節目ですしね。2、3年付き合うことを考えたら、早い方がいいに決まってます。でも、なかなかいい人に巡り合えなくて、それでネットで相手を探すことにしたんです」
ネット。新時代の出会いのスタイルだ。
「その頃はまだ、マッチングアプリは普及してなかったんですけど、学生時代の友人がネットで知り合った人と結婚したと聞いて、そこを紹介してもらいました。登録には運転免許証などで年齢を申告しなければならなくて、名前や年齢の詐称もできないし、信用できると思ったんです」
成果は?
「最初はあまりうまくいきませんでした。写真と実物の差が激しいというか、会ってみると全然違うんです。掲載されていた写真は奇跡の1枚みたいなもので、騙されたような気分になりました。見た目はよくても食事の仕方が受け入れられなかったり、自信満々でモラハラっぽかったり、生理的に無理だったりする相手が続いて、さすがにちょっとめげましたね。でも、諦めずにいろいろ探していたら、ようやく気になる人が現れたんです。相手の男性は年齢33歳で、見た目はいいし、都銀勤め、その上都心のマンションを所有しているという、とんでもない優良物件でした。すぐにメッセージを送って、やりとりして、デートにこぎつけたんです。会ったら写真以上にかっこよくて、一目惚れでした。彼も私のことを気に入ってくれて、すぐ付き合いが始まったんです」