みうらじゅんさんが『松本清張の女たち』を読んでみたら……

『松本清張の女たち』刊行記念特集

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 松本清張ってどんな人? 実は太宰治と同い年なんです。

 松本清張と太宰はともに明治42年(1909)生まれ。太宰が38歳でこの世を去ったあと、入れ替わるように清張は40代で専業作家の道を歩み始めます。その後、高度成長期からバブル崩壊までを舞台に40年間猛烈な勢いで書き続け、平成4年(1992)82歳で現役作家のまま他界しました。

 『ゼロの焦点』『砂の器』『黒革の手帖』といった超有名作品をはじめ、歴史、政治、宗教、思想と広範な知識を持ち、古代史ものや実際の事件の闇を探るノンフィクションも執筆。その執筆量に腕が耐えられず、ペンを持つことができなくなってからは、専属の口述筆記者を雇って創作を続けた逸話もあります。映像化作品は数知れず、実はドラマ「家政婦は見た!」第一話も松本清張の原作(「熱い空気」)です。

 イラストレーターでエッセイストのみうらじゅんさんは『清張地獄八景』(文春文庫)を編集するほど、清張愛に溢れています。いまだ衰えない松本清張の人気の秘密は「女」にある―そう考えて酒井順子さんが執筆した『松本清張の女たち』を読んだ、みうらさんが辿り着いた、松本清張像とは?

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酒井さん探偵

松本清張の女たち

松本清張の女たち

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 先ず、そのタイトル『松本清張の女たち』と、表紙写真(清張さんと新珠三千代さんの)にグッときた。

 清張ファン垂涎の書であることは間違いないし、読み進めると著者・酒井さんの深い調査力と考察ぶりに感心しまくりだった。

 かく言う私も過去に『清張地獄八景』なる本を出しており、清張地獄に堕ちないよう警鐘を鳴らしたつもりでいた。ちなみに清張地獄とは、地位と金を「成功」の象徴と捉える輩が生み出す煩悩。当然、そこには愛人の存在もあり、〝見とるぞ見とるぞ″とあくまで小説の中だが、清張アイ(眼)は見逃さない。必ず生き地獄に堕とされるハメに

 酒井さんが調査したのは、そんなどうしようもない男たちではなく、清張の生み出したヒロインの方。”お嬢さん探偵”から、醜く描かれた女性まで。軽妙なタッチで書き示されていて”バッカだよね、男って”と、改めて思った。そして、人間の煩悩ならやっぱ清張さんにお任せ! なんだよなって。

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