ミシェル・フーコー『性の歴史』と千葉繁『造化機論』が教えてくれたこと/社会学者・赤川学インタビュー
【インタビュー&試し読み】東大の社会学者が語る、読むべき性科学の書
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古来、アカデミズムにおいて「人間の性」というテーマは、洋の東西を問わず医学者や哲学者をはじめとする多くの研究者にとって重要なものであり続けてきました。
ですが、さまざまな理由により非科学的な言説が信じられていた時代も長く、今では奇書として扱われてしまうような文献も数多くあります。一方で、ミシェル・フーコー、レヴィ=ストロース、あるいはジークムント・フロイトなど歴史に名を残した先人たちが性について何を考え、どう解釈していたかを知ることは、現代を生きるわたしたちの思考のヒントにもなります。
そこで、セクシュアリティの歴史社会学をライフワークとしている東京大学大学院人文社会系研究科の赤川学教授に、この時代に読むべき性科学の書についてお話を聞きました。
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『性の歴史』から『下ネタ大全』まで
――YouTubeで公開されている「セクシャリティ研究者と『下ネタ大全』著者の対談」(ゆる学徒カフェ・オープンマイク)は再生回数が5万回を超えています。この動画を観て、赤川学先生にぜひお話をお聞きしたいと思いました。
あれは元々、私が別名義で連載をしている雑誌の編集部から『読むだけでグングン頭が良くなる下ネタ大全』(堀元見著、新潮社)を渡されて、著者の堀元さんと対談して欲しいと言われたんです。何だこの本はと思いながら読んでみたら、実に真面目な本で感心しました。ここまで真面目に下ネタに取り組んでいらっしゃる方がいると知り、応援したい気持ちになりました。
――昨今、性の多様性やセクシュアリティの歴史に興味を持つ人は増えており、議論も盛んに行われています。そこで、性を学問するにあたって読むべき書を、セクシュアリティ研究の専門家である赤川先生に教えて頂きたいと思っています。先生は『性への自由/性からの自由――ポルノグラフィの歴史社会学』や『セクシュアリティの歴史社会学』など著書も多数おありですが、元々セクシュアリティの研究を始められたきっかけは何だったのでしょうか。
大学(東京大学)に入ったのが1986年なんですが、当時ニューアカブームというのがありまして。浅田彰『構造と力』とか中沢新一とか、読んでもよくわからないような難しい本を、駒場キャンパスの1年生が小脇に抱えて持っているような時代でした。その中で、性の話題というのは割と出てきていたんですよ。例えばジル・ドゥルーズとフェリックス・ガタリというフランスの哲学者がいるのですが、『アンチ・オイディプス』という共著で「n個の性」という概念を提唱していました。
――フロイトが唱えたオイディプス・コンプレックスへの批判として出された著作ですね。
そうです。簡単に言うと性というのはn個あって、その性的なエネルギーを革命に使いましょう、という思想です。それと、ミシェル・フーコーの『性の歴史』第1巻が翻訳されたのが1986年ですので、ほぼ同時期ですよね。たまたま生協書籍部で見かけておもしろそうだなと思って読んでみたのですが、全くわかりませんでした。全然話がエロくないですし(笑)。権力だの、セクシュアリティの装置だの、なんじゃこりゃと思ってほとんど読まずに放置しました。
――最初からのめりこんだということではなかったのですね。
そうなんです。ただ、大学で周りの人たちはマックス・ウェーバーとかタルコット・パーソンズとか、いわゆる社会理論を真面目に研究していたのですが、私にはとてもついていけなかったんです。それで卒論を決める段になって、何かを書かなきゃいけないですよね。自分が一番得意なものは何かと考えたら、アダルトビデオだったんです。


