佐伯ポインティ氏、宮島未奈氏推薦!「読んだら絶対に語りたくなる」と話題の『みんな、好きが下手』試し読み②

読んだら絶対に語りたくなると話題の小説『みんな、好きが下手』刊行記念特集

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「イタくなれ、欲しがれ、ちゃんと疲れろ!と激励してくれる―SNS時代の青春小説がここにある!」
――マルチタレント、佐伯ポインティさん
「小林さんの小説を読むと元気が出る。成瀬が好きな人はハマると思う!」
――『成瀬は天下を取りに行く』著者宮島未奈さん 

 2015年、「くたばれ地下アイドル」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞し、受賞作を含む同名の単行本(のち『アイドルだった君へ』に改題し文庫化)にてデビュー、続く二作目『たぶん私たち一生最強』も多くの読者の共感を呼び話題となり、いま一番「刺さる!」と話題の作家、小林早代子さん。三作目となる新刊『みんな、好きが下手』は、現代を生きる大学生とSNSをテーマにした唯一無二の「失恋小説」です。
彼女に「好き」と言うことは、「いいね!」を1000回もらうより難しい
小林早代子さんの新刊『みんな、好きが下手』の冒頭を試し読み公開いたします。

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 美浦ゆりとは、高校三年生の夏から付き合い始めた。
 高三のクラス替えの後すぐに、お互いの友人同士の席が近くて自然と仲良くなった。くるくるとよく喋る美浦とは会話のテンポが合って、ゆっくり始まったバドミントンのラリーがだんだん制御不能な速さになっていくような、ただ楽しいというだけではない胸がすくような快感があった。冗談を言って小突きあったり、大騒ぎしながらクラスの雑用を押し付けあったりした。席が隣になった時は、俺たちの騒がしさに教師も呆れていた。校外学習の班決めでは、まず男女に分かれて仲の良い者同士で三人ずつのグループを作り、その後くじ引きで男女グループを引き合わせ六人の班を作るという手筈だったのに、事前に示し合わせて小細工をして、美浦のいる女子グループと同じ班になった。
 剣道部の練習が終わると、校門付近で女子たちとだべっている美浦と何となく合流して、そのまま男女五、六人でまとまって帰るのが習慣になっていた。異性にしてはまあまあ仲の良いクラスメイトというだけの関係性から、湿っぽい所有欲みたいなものがお互い滲み始めたのはいつ頃だっただろうか。電車の中では、美浦のそばに立つのがいちばんしっくり来た。美浦の筆記用具を我が物顔で使ったりした。知らん顔して手の甲に触れてみたりもした。
 運動部が引退し始める頃になると、受験までの束の間の解放感に煽られたのか、新たなカップル発生の噂をよく耳にするようになった。浮き足立った周りの空気に飲まれていた。俺ならいけるだろうという驕りもあった。夏休みを間近に控えたある日の放課後、美浦の最寄駅で一緒に電車を降りた。「改札まで送る」と言うと美浦は何それ? とまんざらでもなさそうに笑った。その笑い方を見て、やっぱりいける、と確信を強くした。ホームの階段を上がって改札まで歩くたった数分を、やけに長く感じた。じゃあね、って含み笑いをしながら改札を抜けようとする美浦を軽く引き留めて、「俺たちも、そろそろ付き合う?」と言った。
 俺の一世一代の告白に、美浦は何を言っているのかまるでわからないという表情で、「は?」と返した。俺はにわかに恥ずかしくなって「は? ってお前…もういいわ」とすぐに引き下がった。別の女友達にそのことを報告すると、「そろそろ付き合う?」は最悪! マジでない! とこっぴどく怒られて、すぐさまジン太告白対策委員会なるものが設立された。いつメンでああでもないこうでもないと言い合って、美浦が何の話ーと近寄ってきたらしらじらしく話を逸らした。俺は実際に友人たちの助けを欲してたわけじゃなくて、こういうしょうもない会議とかくじ引きの小細工とか、そういう色恋の茶番がクラスで容認されている特権みたいなのを味わっていたのだ。
 友人たちの冷やかしと後押しを一身に受け、忘れもしない一学期の終業式の日、同じように美浦の最寄駅で途中下車して「好きだから、付き合おう」としぶしぶ言い直した。万が一ダメでも夏休みの冷却期間でうやむやになるだろうという俺のみみっちい思惑はバレバレだったと思う。一瞬の沈黙ののち、美浦が笑いながら「いいよ、付き合ってあげても」と言ったので、内心ビビり倒していた俺もようやくほっとして「お前っ、何様だよ」といつものように笑って言い返すことができたのだった。