各話に仕掛けられたどんでん返し、そしてラストに待ち受ける巨大な「罠」とは? 水生大海『私のせいではありません』第1話試し読み⑤

どんでん返しの女王、水生大海が紡ぐ驚嘆連作ミステリ『私のせいではありません』刊行記念特集

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 日本推理作家協会短編部門にノミネート経験もあり、『その嘘を、なかったことには』、『最後のページをめくるまで』など、企みに満ちたミステリ小説で人気の作家、水生大海みずきひろみさん。

 新刊『私のせいではありません』のテーマは「美術業界の闇」。セクハラ、アカハラなどのハラスメント行為だけでなく、派閥争いやギャラリーストーカーなど、いま社会でも問題視されている若手美術家を取り巻く搾取構造を炙り出す衝撃作です。

 その第1話「六年前の赤い扉」を全5回にわたり特別公開いたします。

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「いいこと?」
「瑠璃は、陽向の介護生活が終わったことを知っている?」
「うん、結婚するって連絡がきたときに知らせた。お悔やみを言われたよ」
「挙式や披露宴への招待がなかったのは、それだと思うよ。結婚相手の家に配慮して、喪中の人を呼ばなかったんじゃない?」
 千奈の話に、由紀も「ああ」と納得の声を出す。
「え、そういうものなの?」
「喪中は穢れの期間だからお祝いごとに参列しない、というマナーみたいなものがあるわけ。喪中の人をすべて知ることはできないから招待するのは問題ないけど、招待された側が判断する。で、招待された側は基本遠慮する、どうしても参列したいなら招待者に許可を得る、ってかんじかな。でもいざ参列したいって言われたら断わりづらいし、結婚相手がそういうのを気にする家なら、文句を言われそう。そのあたりを総合的に判断して、誘わなかったんじゃないかな。だけど二次会は友達が中心だし、そう堅苦しく考えなくていいよね。だから陽向、未緒と乙羽は挙式から招待されたのに自分はそうじゃなかった、なんてがっかりしなくていいよ」
 千奈に図星を突かれて、身体が熱くなった。由紀も含み笑いをしている。
…ばれてた?」
「うん。ショックだー、って顔をしてた」
 恥ずかしくて、さらに熱くなる。汗まで出てきた。ネクタイを緩める。
「いや、なんていうかその、えっと、けっこうお堅い家なんだね。瑠璃が結婚する相手」
 私がそう言うと、ふたりは呆れはてたような表情になった。
「知らないの? 高宮家だよ、高宮家」
 由紀がまじまじと見てくる。
「英司さんだよね。たしかに高宮って苗字が招待状にあった」
「そういう意味じゃなくて、タカミヤ食品の社長の息子! つまり次期社長なの」
「あそこ同族会社だから、確実にそうだね」