「第29回山本周五郎賞」(新潮文芸振興会主催)が16日に発表され、湊かなえさんの『ユートピア』(集英社)が受賞した。モデル・押切もえさん(36)の小説『永遠とは違う一日』(新潮社)は惜しくも賞を逃した。
1987年創設の山本周五郎賞は「すぐれて物語性を有する新しい文芸作品」に贈られる賞で、過去の受賞者には、吉本ばななさん、宮部みゆきさんらがいる。
3度目のノミネートでの受賞となった湊氏の『ユートピア』は、共にボランティア基金を設立した母親たちを主人公にした心理サスペンス。
選考後の会見で佐々木譲選考委員は“湊さんと投票では僅差でした”とし、押切さんとのW受賞も検討されたことを明かした。
落選の報を受け、押切さんはブログとTwitterを更新。〈最後まで候補に残ったと聞き、とても嬉しかったです。〉〈応援してくださった皆さま、本当にありがとうございます。ファンの皆さんには、すごくすごーく、心から感謝しています。〉とのコメントを寄せた。
押切さんの第2作目となる小説『永遠とは違う一日』は、雑誌「小説新潮」に連載された短編6本からなる連作短篇集で、恋や仕事に立ち止まりそうな女性たちの心情を描いている。
また、同日発表された「三島由紀夫賞」は、「新潮」4月号に掲載された蓮實重彦さんの「伯爵夫人」が受賞。昭和10年代の東京を舞台に、旧制高校生の官能的な体験を描いた。
候補作品は以下のとおり。
■第二十九回「三島由紀夫賞」候補作品
いしいしんじ『悪声』(文藝春秋社)
山下澄人『鳥の会議』(河出書房新社)
三輪太郎『憂国者たち』(講談社)
亀山郁夫『新カラマーゾフの兄弟(上下)』(河出書房新社)
蓮實重彦「伯爵夫人」(「新潮」2016年4月号)
■第二十八回「山本周五郎賞」候補作品
湊かなえ『ユートピア』(集英社)
中田永一『私は存在が空気』(祥伝社)
宮内悠介『アメリカ最後の実験』(新潮社)
相場英雄『ガラパゴス』(小学館)
押切もえ『永遠とは違う一日』(新潮社)
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