第34回三島賞・山本賞が決定 『旅する練習』『テスカトリポカ』が受賞

文学賞・賞

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 第34回三島由紀夫賞と山本周五郎賞(新潮文芸振興会主催)が14日に発表された。三島賞は乗代雄介さんの『旅する練習』(講談社)が、山本賞(または山周賞)は佐藤究さんの『テスカトリポカ』(KADOKAWA)が受賞した。

 三島賞を受賞した乗代雄介さんは、1986年北海道生まれ、法政大学社会学部メディア社会学科卒業。2015年「十七八より」で第58回群像新人文学賞を受賞しデビュー。2018年に『本物の読書家』で第40回野間文芸新人賞を受賞。著書に『十七八より』『本物の読書家』『最高の任務』『ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ』がある。

 受賞作『旅する練習』は、中学入学を前にしたサッカー少女が、コロナ禍で予定がなくなった春休みに小説家の叔父と徒歩で千葉の我孫子から鹿島アントラーズの本拠地を目指す旅を描いたロード・ノベル。

 山本賞を受賞した佐藤究さんは、1977年福岡県生まれ。2004年に佐藤憲胤名義で書いた『サージウスの死神』が第47回群像新人文学賞優秀作となりデビュー。2016年に『QJKJQ』で第62回江戸川乱歩賞を受賞。2018年には『Ank:a mirroring ape』で第20回大藪春彦賞および第39回吉川英治文学新人賞のW受賞を果たしている。

 受賞作『テスカトリポカ』は、メキシコ、インドネシア、日本を舞台に、麻薬の密売と臓器売買に関与する人々を描いたクライムノベル。闇のビジネスを築き上げる過程での圧倒的な暴力と恐怖が人々を支配していく世界を緻密に構築している作品だ。

 三島賞・山本賞は昭和63年に創設された文学賞。三島賞は小説、評論、詩歌、戯曲を対象とし、文学の前途を拓く新鋭の作品一篇に、山本賞は主に小説を対象とし、すぐれて物語性を有する新しい文芸作品に与えられる。

 候補作品は以下のとおり。

■第34回三島由紀夫賞候補作(出版社・掲載誌)
『水と礫』藤原無雨(河出書房新社)
『旅する練習』乗代雄介(講談社)
『リリアン』岸政彦(新潮社)
『彼岸花が咲く島』李琴峰(「文學界」3月号)
『象の皮膚』佐藤厚志(「新潮」4月号)

■第34回山本周五郎賞候補作(出版社)
『犬がいた季節』伊吹有喜(双葉社)
『八月の銀の雪』伊与原新(新潮社)
『とわの庭』小川糸(新潮社)
『高瀬庄左衛門御留書』砂原浩太朗(講談社)
『テスカトリポカ』佐藤究(KADOKAWA)

 昨年の三島賞は離婚後、心を病み、酒を飲んでは暴れることを繰り返すようになった母親との関係を19歳の浪人生の視点で描いた宇佐見りんさんの『かか』(河出書房新社)が、山本賞は馬主として競馬に夢を託す男たちを描いた大河早見和真さんの『ザ・ロイヤルファミリー』(新潮社)が受賞。過去には舞城王太郎さん、田中慎弥さん、村田沙耶香さん、今村夏子さんらが三島賞を受賞、吉本ばななさん、吉田修一さん、森見登美彦さん、小野不由美さんらが山本賞を受賞している。

Book Bang編集部
2021年5⽉14⽇ 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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