港区の平均所得は904万円、一方足立区は323万円 格差を個性と捉える23区比較論

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 話題の新書『23区格差』(中央公論新社)の著者、池田利道さんが3月20日NHKラジオ第1「マイあさラジオ」のコーナー「著者に聞きたい本のツボ」に出演した。都市計画コンサルタントの池田さんは、同書の中であらゆるデータを駆使しながら東京23区を比較し、都市の生存モデルのカギについて考えている。そして東京一人勝ちの理由を分析し、経済の集中だけでは説明のつかない街の魅力について考えることで、地方創生のアイデアを導き出そうと試みている。

■東京23区の非常識な常識

 同書には23区を比較した話題が満載だが、まず池田さんは東京23区だけにみられる「非常識な常識」について解説した。全国的にこうに違いないと思われている事が実は23区では違っているという。例として少子高齢化の問題を取り上げ、2000年から2010年の10年間で0歳から4歳までの幼児についてみてみると、全国では10.3%減っている。しかし23区では8%増えている。また0歳から4歳のなかでも小さな子供ほど増えているという。また千代田区、中央区、港区では高齢化率は下がっており、「日本は少子高齢化だ」という考えは東京には当てはまらないという。

■港区の平均所得額は904万円

 そして各区の特徴をデータをもとに説明した。港区は「発展要素が詰まった東京の要といえるかもしれない」と紹介。人、モノ、金の全ての要素が集まっている。昼間の働いている人口は23区でトップ。23区全体の30階以上のタワービルの27%が港区に集まっている。そのほとんどがオフィスビル。そして情報産業の大集積地でもある。TVでいえば民放キー局は全て港区にある。また所得額でいえば全国の平均が320万円、東京23区は430万円のなか、港区は904万円とずば抜けて高いという。

 同様に中央区は「人口増を意図したぶれない施策が結実」、品川区「商店街に象徴されるおせっかいタウン」、世田谷区「奥さま文化に足を取られるキャリアウーマン」、江戸川区「海抜0メートルに負けない家族力」とデータをあげながら各区の特徴を解説した。

■格差を個性に変える

 池田さんは東京は格差を個性に変えており、それぞれの区がそれぞれの魅力をもって人を集め、発展している。そしてどんな街が人を集めるかを考えることは地方創生に繋がると語る。人口減の進む地方にあてはめるならば、人口が減っているということは減った分ストックが増加している。そのストックを使えば何かを呼び込むことができる。つまり差を個性にかえることができる、と語り、東京をしっかりみつめることで地方の再生、創生を考えるヒントがたくさんみつかる、と締めくくった。

 NHKラジオ第1「マイあさラジオ」のコーナー「著者に聞きたい本のツボ」は毎週日曜6時40分ごろに放送。聞き手は野口博康さん。

Book Bang編集部
2016年3月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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