書籍市場の縮小傾向が続くなか、『火花』ブームなどで文芸書は好調-。調査会社のオリコンは22日、平成27年の「書籍年間マーケットレポート」(集計期間は26年12月29日~27年12月27日)を発表した。

 それによると、昨年の書籍市場の総売上額は約1兆149億円(対前年比98.7%)、売上部数は約11億4283万部(同97%)となり、いずれも前年割れ。しかし、200万部を超えるメガヒットとなった又吉直樹『火花』(文芸春秋)をはじめ、本屋大賞を受賞した上橋菜穂子『鹿の王()』(KADOKAWA)など文芸書は好調で、「単行本」部門は売上額、売上部数ともに微増となった。

 同調査は21年から毎年発表されているが、長期低落傾向が続き、「単行本」の売上額が前年を上回ったのは調査開始以来初めてという。ただ、新書やムックなども含めた「BOOK(総合)部門」全体では減少。同調査は「勢いは市場全体を活気づかせるまでには及ばなかった」と分析している。「文庫」や「コミック」も売り上げを減らした。

 ジャンル別の分析では『火花』が引っ張った「文学・ノンフィクション」に加えて、「政治・経済・社会等」が前年比で2割以上増と大きく伸びた。トマ・ピケティ『21世紀の資本』(みすず書房)とその関連書、増田寛也『地方消滅 東京一極集中が招く人口急減』(中公新書)や藤田孝典『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』(朝日新書)といった作品が主力で、売り上げ上位の作品には「“危機”や“格差”といったキーワードが目立った」という。

 一方、美容・ダイエットやファッション、健康、スポーツなどをカバーする「趣味・生活・実用」の落ち込みは深刻で、25年発売の『つけるだけ 歩くだけでやせる魔法のパッド』以降は「ヒット作が創出されていないことが要因」としている。

 出版社別の売上額では、コミック『七つの大罪』『進撃の巨人』シリーズや直木賞受賞作の東山彰良『』、重松清の文庫『流星ワゴン』などを展開した講談社が3年連続首位。2位集英社、3位KADOKAWAとなっている。

産経新聞
2016年1月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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