『一年有半』
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『一年有半』中江兆民著、鶴ヶ谷真一訳
[レビュアー] 産経新聞社
喉頭がんで余命1年半と宣告された中江兆民が、何はばかることなくしたためた随筆集である。政治家、政治・経済・社会に対する容赦ない批判、はたまた人形浄瑠璃への深い愛が語られる。明治34年に刊行され大ベストセラーとなったものを、日本エッセイスト・クラブ賞を受賞した鶴ヶ谷真一さんが流麗かつ品格のある現代文に移しかえ、詳細でふくよかな注を施した。読みやすく面白い。
生涯を藩閥政治との戦いにかけた兆民の透徹した視線は、100年以上も後の日本も穿(うが)つ。日本の自由主義思想の出発点を知るうえでも必読の書であろう。(光文社古典新訳文庫・1040円+税)