【児童書】命の誕生に心ふるえる『あったかいな』くすのきしげのり作、片山健絵

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【児童書】命の誕生に心ふるえる『あったかいな』くすのきしげのり作、片山健絵

[レビュアー] 桑原聡(産経新聞社 文化部編集委員)

 ゆうちゃんの家で飼っているネコのミーちゃんはもうすぐお母さんになる。ゆうちゃんはもちろん、友達のあっちゃんも赤ちゃんが生まれるのを楽しみにしている。

 ある日、ゆうちゃんがあっちゃんに手伝ってもらってお産をする箱を作ると、ミーちゃんは箱のようすを注意深くうかがってから中に入っていった。

 それから数日後、あっちゃんを連れて家に戻ると、ついにその日が。ふたりがそっと箱の中をのぞくと、ミーちゃんは一生懸命に赤ちゃんを産んでいた。

 3匹の赤ちゃんを産み終えたミーちゃんをいつものようにふたりがなでようとした瞬間…。ページを繰って現れるのは、見たこともないような怖い顔をしたミーちゃんの姿。ふたりは慌てて手を引っ込める。この場面は読み手に強烈な印象を与えるに違いない。

 かいがいしく赤ちゃんの世話をするミーちゃんの姿を見ているうちに、ふたりはお母さんに甘えたくなってくる。新しい命の誕生に立ち会った少女の心の変化がいとおしい。(廣済堂あかつき・1600円+税)(桑原聡)

産経新聞
2016年6月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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