『「働き手不足1100万人」の衝撃』
- 著者
- 古屋星斗 [著]/リクルートワークス研究所 [著]
- 出版社
- プレジデント社
- ジャンル
- 社会科学/社会科学総記
- ISBN
- 9784833425148
- 発売日
- 2024/01/30
- 価格
- 1,760円(税込)
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
『「働き手不足1100万人」の衝撃 2040年の日本が直面する危機と“希望”』古屋星斗/リクルートワークス研究所著
[レビュアー] 佐藤義雄(住友生命保険特別顧問)
生産性向上 具体的な提言
映画「パーフェクト・デイズ」が話題を呼んだ。全体の感想はともかく映画を観(み)て改めて感じたのは主人公のようなエッセンシャルワーカーの働きで我々の社会生活が支えられているという事実だ。
ところがそこで描かれた社会全体を支える労働に従事する人々の不足が深刻な問題となりつつあるという。今後の労働市場はどうなるのだろうか。リクルートワークス研究所に所属する本書の執筆グループは有効な対策が実行されない限り2030年には341万人余、40年には1100万人余の働き手不足となり労働力をめぐる状況は社会が成り立たないほどの深刻な事態となると警告する。
人流、物流、建設作業などを担う労働者が大幅に足りなくなるうえ、介護職員も不足し、活躍していた優秀な人材が介護のためやむなく離職し、人手不足に追い討ちをかける事態が発生するという。さらに企業間の人材争奪戦が激化し、特定の企業や業界に働き手が集中して他分野での人手の確保が困難になることも予想し、警察官や自衛官等公務員の応募が少なくなっていることがその兆しであると指摘する。外国人労働者で不足の労働力を埋めることは日本の受け入れ態勢が劇的に変化しない限り難しい。このように本書は我々にとって衝撃的で絶望感すら抱かせる厳しい未来の社会像を示す。
だが一方では、諦めず知恵と実行力を発揮すれば生産性が向上し最悪の事態は避けられると我々を勇気づける。自動化、ITによる管理や、ロボットへの代替を早急に実現すること、地域のインフラ点検をジョギングのついでに行うなどの「ワーキッシュアクト」の取り組みや、シニアの活動を推進すること、さらに仕事の無駄を徹底的に省くことに取り組めば、30年の働き手不足の規模は28万人余となり、40年には493万人余と、対策を何も講じなかった場合に比べ半減するという。これは30年では社会の持続性が確保され、40年に向けた本格的な構造改革に取り組む猶予が与えられることを意味する。厳しい未来を語るが我々に希望も与えてくれる力作。(プレジデント社、1760円)