電子書籍は紙の本を殺すのか? 「知の巨人」が〈読書の未来〉を考える。【自著を語る】

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読書脳 ぼくの深読み300冊の記録

『読書脳 ぼくの深読み300冊の記録』

著者
立花 隆 [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784167906580
発売日
2016/07/08
価格
825円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

電子書籍は紙の本を殺すのか? 「知の巨人」が〈読書の未来〉を考える。【自著を語る】

[レビュアー] 立花隆

 本書は二つの部分からなる。後半の本体部分について先に述べておけば、こちらは、いまも「週刊文春」で連載がつづいている「私の読書日記」の二〇〇六年十二月七日号から二〇一三年三月十四日号にいたる約六年分をおさめたものである。一九九二年からはじまった「私の読書日記」から生まれた本は、『ぼくはこんな本を読んできた 立花式読書論、読書術、書斎論』『ぼくが読んだ面白い本・ダメな本 そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術』(ともに文春文庫)『ぼくの血となり肉となった五〇〇冊 そして血にも肉にもならなかった一〇〇冊』(文藝春秋刊)に次いで、これで四冊目になる。

 本書におさめるにあたって、若干の加筆訂正を行った部分もあるが、基本的には初出のままである。「週刊文春」の「読書日記」には、複数の書き手がいて、それぞれに独自のスタンダードで掲載書を決めて、勝手なことを書いている。編集部からの掲載書の選択、記事内容についての押し付けはいっさいない。各人が好き勝手にやっている。

 ここで、私がどのように本を選んでいるか、どういうつもりでこのページを書いているかについて、ここにメモ風のことを述べておく。私はこのページを書評のページとは思っていない。また純粋に私的な読書ノートとも思っていない。むしろ、そのときどきで書店の店頭にならぶ本の中で、読む価値がある本の紹介のページと思っている。従って、〆切が近づいた時点で、具体的な書店(近所の書店二軒と神保町の東京堂書店、三省堂書店、新宿の紀伊國屋書店、東大生協など)の店頭にならぶ本をサーッと見て歩き、次々に心ひかれる本をカゴに入れ、あとは読みながら本を選んでいく。選ぶいちばんの基準は広義の「面白い」ということに置いている。といっても、単なる娯楽本読み物本のたぐいは、いっさい排除している。フィクションは基本的に選ばない。二十代の頃はけっこうフィクションも読んだが、三十代前半以後、フィクションは総じてつまらんと思うようになり、現実生活でもほとんど読んでいない。人が頭の中でこしらえあげたお話を読むのに自分の残り少い時間を使うのは、もったいないと思うようになったからである。選択で気を使うのは、取り合わせである。私の場合、関心領域が広いから、領域の取り合わせ、本の内容のむずかしさ、肩のこらなさなどの取り合わせにも気を使いながら、次に取りあげる本を選んでいる。

 もう一つ気を使っているのは、あまり知られていない本だが、「こんな本が出ているということそれ自体にニュース価値がある(人に知らせる価値がある)」と思うような本に出会ったときは、それを積極的に取りあげるということである。その反対に世評が大きすぎる本の場合は、ワンランク下の力の入れ方にして、取りあげないか、取りあげても軽い言及にとどめるということである。

文藝春秋BOOKS
2016年7月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

文藝春秋

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