明文堂書店石川松任店「暗い時代の不可思議な事件」【書店員レビュー】

レビュー

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人喰いの時代

『人喰いの時代』

著者
山田 正紀 [著]
出版社
角川春樹事務所
ISBN
9784894565005
価格
842円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

明文堂書店石川松任店「暗い時代の不可思議な事件」【書店員レビュー】

[レビュアー] 明文堂書店石川松任店(書店員)

探偵小説を愛読し、人間心理の探求者を自称する呪師霊太郎は、愛嬌があり人なつっこいが、右頬から顎にかけて、薄く傷あとが走っていて暗いものを感じさせる若者だ。本書は、そんな霊太郎と不穏で謎めいた過去を持つ椹秀助の二人が昭和初期を舞台に不可思議な謎に出くわすという連作ミステリである。
人間心理の不可思議さ(あるいは歪みと言ってもいいかもしれない)がひとつのテーマになっているため、真相は決して綺麗なものではなく、鮮やかな幕切れとは言いがたい。しかしこのもやもや感が暗い時代の雰囲気と、とてもよく合っている。
最近、『屍人の時代』が刊行されたので、まずはその前にということで読んだのですが、もっと前に読んでおけば良かったと後悔してしまいました。深く心に残る作品です。詳しくは書けないけれども、著者の企みは壮大である。最後の「人喰い博覧会」で、ほとんどの読者が息を呑むことになるはずだ。
本書の暗く感傷的な雰囲気から、内容自体(そもそもジャンルさえ)はまったく違いますが、スティーヴン・キングの名作『グリーン・マイル』を思い出しました。大恐慌の時代(両作の舞台となる時代はかなり近いですね)を舞台に、看守と死刑囚の塀の中の友情を幻想的に描いた、映画としても非常に有名な一冊です。まだ読んだことがないという方は、そちらも是非、おすすめです。

トーハン e-hon
2016年9月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

トーハン

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