76歳のファッションデザイナー鳥居ユキが語る 年齢を重ねても若々しくおしゃれを楽しみ続ける秘訣

インタビュー

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YUKI TORII TOTAL COORDINATE BOOK

『YUKI TORII TOTAL COORDINATE BOOK』

著者
鳥居 ユキ [著]
出版社
世界文化社
ジャンル
芸術・生活/諸芸・娯楽
ISBN
9784418182442
発売日
2018/10/17
価格
1,980円(税込)

書籍情報:openBD

ファッションデザイナー鳥居ユキさんが語る 人生100年時代、おしゃれの鍵は“好奇心”

[文] 清水井朋子


プレスルームにて、最旬スタイルで撮影。

昨年秋に発売された『YUKI TORII TOTAL COORDINATE BOOK』。ファッションブランド「ユキ トリヰ」のデザイナーである鳥居ユキさんによる、かつてないスタイルブックとして話題を集めている。年齢を重ねても自分らしく若々しくおしゃれを楽しみ続けるための秘訣を伺った。

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 1962年にファッションデザイナーとしてデビューして以来、60年近くにわたってパリと東京でコレクションを発表し続けてきた鳥居ユキさん。『YUKI TORII TOTAL COORDINATE BOOK』の発売後は、服づくりとはまた違った手応えを感じているという。

「毎日のコーディネートの参考にしてくださったり、ギフトとしてお友達やお母さまへ、中にはご主人から奥さまに贈ってくださったり……嬉しい反響をたくさんいただいています。書店で見かけて手に取ったという40代の女性が“あまりに素敵だったので”と、ブティックにいらして色々とお買い上げくださったり、80代のお客さまが“この本を読んでおしゃれが楽しくなった”とおっしゃってくださったり、読者の年齢も想像以上に幅広いですね」

 この本ではプロのモデルを使わず、鳥居さん自身がモデルとなって多数のコーディネートを披露している。

「毎年2回新作を発表しているショーの時も、“モデルさんが着るから素敵だけれど私に似合うかしら……”とおっしゃるお客さまが時々いるんです。どんな服も、ご本人が“好き”と思ってお召しになるのが一番似合うし、同じ服でも着る方によって違ったイメージになる。今回はそんな一例として、私自身が着ることでリアルに身近に感じていただければと思いました」


『YUKI TORII TOTAL COORDINATE BOOK』より。鳥居ユキさんご自身の着用による春夏のコーディネート

 実は鳥居さん、この本の制作が始まるずっと前から毎日のコーディネートを写真に収め、撮りためてきた。

「そもそもはシーズンごとに発表している新作を、どうコーディネートしてお客さまに提案するかをスタッフに伝えるために撮り始めたんです。それが、自分自身のコーディネートの記録、日記のようなものになっていって……。毎日のコーディネートを撮ってファイルしておくと“去年の今頃は何を着ていたかしら?”“前回あの方とお会いした時は何を着ていたかしら?”と確認するいい資料にもなるんですよ」

 インスタグラムなどSNSの発達で大人世代にも“自撮り”“セルフィー”が広まりつつあるが、特に発信しなくても自身のワードローブの整理や記録のために、毎日のコーディネートを撮影し残しておくことは、ぜひ真似をしたいアイディアだ。

「もちろん『YUKI TORII TOTAL COORDINATE BOOK』のために、新たに撮り下ろした写真も沢山掲載しています。夏の一番暑い時にコートを着て撮影したり、大変ではありましたが、楽しい時間でした」

■“若見え”の秘訣は、色と柄と好奇心


『YUKI TORII TOTAL COORDINATE BOOK』より。明るいグリーンで気分まで軽やかに。

 どのページも楽しく、アイディアに満ち、何度も手が止まり、また見返したくなる。ヴィジュアルブックとしての『YUKI TORII TOTAL COORDINATE BOOK』の魅力は、鳥居ユキさんならではの色使いやプリント使いがふんだんに盛り込まれていることにもある。年齢を重ねると地味な服が増え、くすんだ印象になりがちな女性が多い中、鳥居さんはヴィヴィッドな色を積極的に取り入れ、花柄とチェック、ヒョウ柄とチェックといった大胆な組み合わせも見事に着こなしている。

「最初は水玉・花・ストライプなどの定番柄から。アニマル柄も万能です。まずは柄の中の1色を他のアイテムと合わせて一体感を出すコーディネートを。色に慣れてきたらそこから少しずつずらしていって、補色で主役のカラーを際立たせて見せるのも楽しいですよ。最初は小物なら、取り入れやすいかもしれません。スカーフなど顔に近い部分に柄物をあしらえば顔色や表情まで華やかで明るくなりますし、いつもの黒や茶色のバッグや靴を、赤などにするだけでも印象は変わります。自分に似合う色、好きな柄を着続けるのも、その方の個性が確立されていきますから、素敵なことと思います。色や柄からパワーをもらって楽しい気分でいると自然に元気が出てきます。服にはそんな効果もありますから」


『YUKI TORII TOTAL COORDINATE BOOK』より。フラワープリントとチェックも合わせてみると意外に自然で上品。

 とはいえ、無理に頑張る必要はなく、大切なのは、おしゃれを“楽しい”と感じる前向きな気持ちと好奇心なのだと鳥居さんは言う。

「おしゃれをしなくてはならない、と義務のように考えるとしんどいので、自分が楽しくなる、素敵に見えて喜びを感じる方法のきっかけ作りと思っていただくといいと思います。昨日は無地だったから今日はプリント物を着てみようかな、今日はスポーティだったから明日はエレガントにしてみようかな、といった程度のトライから始めてもいいのではないでしょうか。ファッションに年齢はありません。お店でも“これは50代の服です”“これは70代の服です”と売っているわけではないでしょう? 毎日の生活の中で面倒くさがらずに新しいコーディネートに挑戦してみる。あの人素敵ね!と気がつくアンテナを張って、真似してみる。そんなちょっとの好奇心で、若々しく、楽しくなるのではないでしょうか」

■手持ちの古いものも今っぽく、自分らしくなる

『YUKI TORII TOTAL COORDINATE BOOK』では、鳥居ユキさんのワードローブが様々にコーディネートされ登場している。中には何シーズンも前のコレクションのものはもちろん、お祖母さまやお母さまから受け継いだジュエリーも。

「ジュエリー……特に手元は、何もつけないと裸でいるような気持ちになるので、その日の気分でいっぱいつけて、重ねづけを楽しんでいます。これは、フランスの友人たちが家に代々伝わるジュエリーを自分のものと組み合わせて楽しむスタイルを、昔から見てきた影響かもしれません。若いうちは華奢なリングひとつでも初々しい手元になりますが、この年齢になるとそれだけではどうも寂しいので、上下に違うリングを足してボリューム感を出しています。祖母のものも母のものも、全部つけちゃう(笑)。“一体それはどういうデザインの指輪ですか?”と聞かれることがありますが、外せばバラバラになるものを、好きに重ねているだけなんです」


『YUKI TORII TOTAL COORDINATE BOOK』より。「手元を美しくすると気分も上がりますし、仕草が丁寧になります」

 服や小物も“古いもの”と“新しいもの”を絶妙に組み合わせてコーディネートするのが鳥居さん流だ。

「古い・新しいよりも、自分らしいか・意外性があるかどうか、がおしゃれに見えるポイントだと思います。コートやジャケットなどシルエットに流行があるものは古臭く見えてしまうこともありますが、Tシャツやニットなどのインナーやスカーフなどの小物類は、流行の波とは別。ご自分のクローゼットの中から引っぱり出してみて、どんどん生かせばいいのではないでしょうか。そのほうが服も喜ぶでしょう?」。


プレスルームにて。次の秋冬シーズンのコーディネートをチェックする鳥居ユキさん。

 一方で、トレンドや新しい素材、アイテムに挑戦する好奇心も大切だ。

「特に素材は確実に進化していますからね。私たちの若い頃より、軽かったり心地よかったりするものが、どんどん開発されています。たとえば、デニム。昔は重くて硬い素材で、ピタピタのジーンズなんてベッドに寝転がってギューっとファスナーを上げないと着られないものもありましたが、今はストレッチ素材や薄手のものも豊富です。足元も、私のコレクションではスーツにヒール靴だと無難にまとまりすぎてしまう時は、あえてスニーカーを合わせてカジュアルにすることがありますが、実際にトライしたお客さまから“若々しくなった”“ファッションが変わって見えた”というお声もいただきました。とにかくご自身の感性を信じて好きなものを堂々と着ていただきたいですね。自信に満ちていると、人は輝いて見えますから」

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鳥居ユキ
1943年、東京都生まれ。61年、文化学院卒業。62年、母・君子のショーに初参加し、作品を発表。75年、パリコレクションに初参加。76年と88年、日本ファッション・エディターズ・クラブ賞(FEC賞)受賞。85年、パリのギャラリー・ヴィヴィエンヌにブティックをオープン。95年、毎日ファッション大賞にて大賞受賞。

撮影/小林秀銀 取材&文/清水井朋子 編集/宮本珠希

世界文化社
2019年7月25日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

世界文化社

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