自社PRの弊害とは?どんなにニッチなビジネスでも「PR」のプロにまかせると大きく変わること

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自社PRの弊害とは?どんなにニッチなビジネスでも「PR」のプロにまかせると大きく変わること

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

広告を出しているわけでもないのに、メディアで引っ張りだこになる会社はたしかにあるものです。『話題にしてもらう技術~90.5%の会社が知らないPRのコツ』(加藤恭子 著、技術評論社)の著者によれば、そのカギを握るのが「PR」。ところが実際のところ、90.5%の企業はPR活動に取り組んでいないのだそうです。

PRに際してやるべきことは多いのに、プレスリリース配信サービスにさえ登録していない会社がまだまだ多いというのです。では、まだPRに着手していない会社は、具体的にどうしたらいいのでしょうか? 遅れをとってしまった以上、もうできることはないのでしょうか?

私が伝えたいのは、「今から始めても遅くない」「今から始めても十分他社に差をつけられる」ということです。(「はじめに」より)

危険なのは、「うちの会社はすごいから、なにもしなくても問い合わせが来て注目されるはず」というように状況を楽観視すること。

そう考えた結果、なんの成果も得られないまま消えていった会社を、PRプランナーである著者はこれまでにたくさん見てきたのだそう。だからこそ、次のようにメッセージを投げかけるのです。

あなたの会社が地味でニッチなビジネスをしていても、その商品やサービスを必要としている相手の間で話題になることはできます。ぜひこの本から、売上向上や会社の存続にすぐにつながるようなヒントを得てください。

また、本書を通じて、今、情報提供の方法がどのように変化し、注目されるために企業がどのような体制で活動しているのかを理解してもらえればと思っています。(「はじめに」より)

こうした考えに基づく本書のなかから、基本的な疑問に答えている1章「話題になるためには何が必要?」に注目してみたいと思います。

「PR=無料」は本当かもしれないけれど…

「メディアに記事として取り上げてもらえれば、お金はかからない(どこかにお金を払う必要はない)からPRは無料。だから、記事として取り上げてもらえるようにしよう」

もしかしたら、そのように考えている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、それを実現させるために必要なノウハウや人件費、時間などを足し合わせると、それは到底「無料」とはいえないはずだと著者は指摘しています。

別な表現を用いるなら、そこにテクニックや時間が必要だからこそ、多くのPR会社やPRコンサルタントが存在しているわけです。

たとえば、本来なら優れた製品をつくることに力を入れなければならないベンチャー企業が、「自力でプレスリリースを書いてテレビ局に連絡をし、取材してもらえるように働きかけよう」と考えて尽力した結果、肝心の製品開発が遅れてしまったとしたら意味がありません。

だいいち、プレスリリースや取材には記事としての「掲載保証」がないのです。経験の浅い社員がどれだけがんばって資料をつくったとしても、それが徒労に終わることは「ある」わけです。そもそも、右も左もわからない状態でテレビ局に連絡を入れたところで、相手にされないことだって考えられます。したがって、そこにもノウハウが求められるのです。

つまり「掲載料を払う必要がない」という意味では無料かもしれませんが、実際のところPR活動にはかなりの労力がかかり、知識やコネクションづくりも欠かせないということです。(28ページより)

取材を受けたらお金を払う? いや、謝礼がもらえる?

「メディア取材の連絡があったけれど、『出演料はなし』というので断った。あまりに失礼すぎる」

著者はTwitter上で、こういった趣旨の発言を見かけたことがあるそうです。しかし、「失礼すぎる」と感じる気持ちもわからないではありませんけれども、著名人やタレント、専門家などを除けば、メディアに出ても基本的に出演料や謝礼はないのが一般的。新聞記事になってもお金はもらえませんし、街頭インタビューに答えてもお金はもらえませんが、それと同じことです。

端的にいえば「出ること自体がうれしい」とされ、謝礼のないケースがほとんどなのです。事実、著者の飼っている猫が猫専門誌に掲載されたときにも、謝礼や掲載誌の提供はなかったそうです。なぜなら、読者であることが前提だから。

一般的には、一般人や一般企業の場合は報酬なし、専門家や芸能人などの著名人であれば報酬ありというケースが大半。企業や個人事業主などの場合、取材を受けた側には「掲載される」というメリットが生じます。

つまりメディアに出ることで、自分や自社のことを多くの人に知ってもらえるため、こうしたことになっているわけです。(30ページより)

全部自社内でやれば安上がり? いえいえ、大きな損失です

「PR会社に依頼していないからコストがかかっていない」

「無料のツールを使っているから予算は使っていない」

「売上を生み出せていないから予算が取れなくても仕方がない」

著者はこうした話をよく耳にするそうですが、実際には「高くつく」こともあるのだとか。会社としては、「その社員の給料だけでPR活動ができている、大きな効果をあげている」と思いがちですが、じつは違うというのです。

さまざまな部門で業務のデジタル化が叫ばれ、大企業などではデジタルツールの導入も進んでいます。ところが本当にツールを望んでいるのは、たったひとりですべてを回して疲弊している小さな会社のPR担当者。

外資系企業の日本法人のPR担当であれば、ひとりだったとしてもツールを活用し、PR会社とともに活動していることでしょう。しかし日本企業の「ひとり広報担当」は、文字どおりなんでもひとりでやっているケースが大半だというのです。

この原稿を書いている間も、Twitterで#ひとり広報 というハッシュタグのついたアカウントの、1人でさまざまな業務をこなして疲弊しているツイートが流れてきました。「体を壊して実家に帰りました」という人もいます。ワークライフバランスの観点からも、ツールの導入や専門家への相談は有効です。(37ページより)

ひとりですべてをこなしていた担当者が体を壊して辞めてしまったとしたら、その時点で会社のPR活動は止まってしまいます。また、そんなことになってしまうような労働環境の会社は、いいイメージを持たれないはず。だからこそ、PRのプロの役割は大きいのでしょう。(36ページより)

著者は、日本国内では広報・PRの仕事の価値が低く見積もられがちだと感じているそう。したがって、企業の広報担当者やPR会社のスタッフが、「自分はどれだけ意味のある仕事をしているのか」を周囲に説明できるようになるためにも本書を活用してほしいと述べています。

PRの価値を実感し、そこに携わっていることに自信を持つためにも、ぜひ本書を活用したいところです。

Source: 技術評論社

メディアジーン lifehacker
2022年11月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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