いわゆる富裕層のイメージとは正反対、身近にいる億万長者の特徴とは?

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いわゆる富裕層のイメージとは正反対、身近にいる億万長者の特徴とは?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

「富裕層」と聞くと、どんなイメージが浮かぶでしょうか?

高級ブランドのファッションに身を包み、自宅のガレージに何台もの外車が並び、アーリーリタイアを果たして頻繁に海外旅行に出かけるーー。

もし、あなたが富裕層に対してそのようなイメージを抱いているのであれば、事実とはまったく異なります。

むしろ生活ぶりは質素で、服装も極めて普通。一見しただけでは、富裕層と一般の人を見分けることはできません。(10ページより)

こう明かしている『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(小林義崇 著、ダイヤモンド社)の著者は、東京国税局で相続税調査を担当し、数多くの富裕層に接する機会を得てきたという人物。

その職に就くまでは、母子家庭に育って経済的に恵まれなかったこともあり、富裕層を遠い存在に感じていたのだそうです。大学卒業後に地元の福岡を離れて東京国税局に就職する決心をしたのも、経済的な理由によるのだとか。

高校・大学と合計1000万円に迫る奨学金(一部有利子)の返済義務を背負ってしまったため、「安定的な収入を得る必要がある」と考えて公務員になることを決意。ただし東京国税局の国税専門官として採用されれば、福岡で国家公務員として働くよりも月給が3〜4万円ほど高いことを知ったため、「奨学金を返すために」その道に進むことにしたというのです。

その結果としてわかったのは、億単位の資産を持つ富裕層も、その人生をたどれば、仕事をして、倹約に努め、地道に資産を蓄えてきた人ばかりだということ。

なにか特殊なことをしたというよりは、節度を持って生活をした結果として、金銭的な余裕を持つに至った人たちだというわけです。

豊かな財産をもちながら生涯を終えた富裕層には、いくつかの共通点があります。彼ら彼女らの行動様式を知ると、富裕層になるべくしてなったことがわかるはずです。

こうした富裕層の共通点をテーマに、本書では、「家計」「資産運用」「生活」「家族」の4つの切り口でお伝えします。(18ページより)

きょうはそのなかから「家計」の部分に焦点を当て、富裕層の真実の姿を確認してみたいと思います。

徹底して支出を避ける意識

相続税調査を初めて経験したとき、著者は富裕層の質素な生活ぶりにたびたび驚かされたのだといいます。

初めての相続税調査で富裕層の自宅を訪問するまでは、「億万長者なんだから、きっと派手な生活をしているんだろう」と思っていたのだそう。ところが実際に調査に入ると、拍子抜けするほど普通の暮らしぶりだったというのです。

広い家が多いものの、高級家具や骨董品がたくさん並んでいるわけではありません。普通の家よりも、むしろスッキリした印象なのです。

富裕層に対する質素な印象は、その後、何度となく相続税調査をしてからも、大きく変わることはありませんでした。

結局、東京国税局の職員を退職するまでの13年の間に、何台もの高級車やプール、プライベートジェットといった、いわゆる“お金持ちアイテム”を目にすることは一度もありませんでした。(23〜24ページより)

国税職員が調査相手の暮らしぶりに目を向けるのは、遺産の金額を推測するヒントになるから。

たとえば「被相続人が死亡する3年前に、不動産を売って1億円を手にした」という情報を得ていたとしましょう。すると、国税職員はその1億円が死亡日にどれくらい残ったかを推測するために、生活費などをヒントにします。

だからといって、いきなり「毎月の生活費の支出を教えてください」といっても警戒されますから、亡くなった被相続人の通帳を見せてもらったり、趣味を聞いたりしながら、生前のお金の使い方を推し量ろうとするのです。(24ページより)

話を聞いた結果、豪華な暮らしぶりをしていることがわかれば、「生前に財産を使い切ったのだな」「これ以上調べても相続税の申告漏れはなさそうだ」と納得できるものの、そのようなケースは稀なのだそう。

むしろ、年金や不動産賃貸などによる収入以内に生活費を抑え、亡くなる直前まで資産を増やし続けていたケースが少なくなかったのだとか。

「お金を稼ぐ」ことが富裕層の条件と思われがちですが、「お金を守る」ということにも力を入れなければ、富裕層として生涯を終えることは不可能です。(25ページより)

そのため、どんな細かい費用であっても、徹底して支出を避ける。そんな姿勢こそが、富裕層の第一条件なのかもしれないと著者はいうのです。(20ページより)

いくら安くても価格に見合わなければ買わない

私が思うに、富裕層はお金をかけるべき物事を見極め、必要以上の食費など、効果の見込めない支出は控えています。

これはケチということではなく、「いくら安くても価値に見合わなければ買わない」といったふうに無駄な支出を意識的に避けているということです。(26ページより)

相続税調査のとき著者がまず気になったのは、富裕層の方々の“庶民的な服装”だったそう。見た目だけでは億単位の資産を相続した人には見えず、(洋服のブランドを尋ねたわけではないものの)カジュアルなファストファッション風の服装が多かったというのです。

私は、「家計簿をきちんとつけている」という富裕層を何度か目にしたことがあります。億単位の資産がありながら、普段の食費や光熱費などの家計簿をつけているのです。

そうした話を聞くと、「お金持ちなんだから、家計簿は必要ないのでは?」とつい思いがちですが、きちんとお金を管理する姿勢がなければ、億超えの資産を築くことは難しかったのでしょう。(27〜28ページより)

どんな仕事をしてお金を得るにしても、いったん上げてしまった生活レベルをあとになって落とすのは簡単なことではないでしょう。そういう意味でも、常日頃からある程度の倹約に努めることは大切。生活レベルをむやみに上げることなく、常に蓄えをしておくことは、先行きの見えない時代だからこそ重要だということです。

つまり著者はそんなことを、億万長者の質素な生活ぶりから学んだわけです。しかしそれは、どんな立場にある方にとっても大切なことなのではないでしょうか?(25ページより)

冒頭で触れたとおり、著者が実際に見てきた“富裕層の実態”に基づく一冊。だからこそ強い説得力を感じさせ、学べることも多いのです。そのため読んでみれば、多くの知見を得ることができることでしょう。

Source: ダイヤモンド社

メディアジーン lifehacker
2023年2月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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