『上司との悩みを成長に変える賢い方法』
- 著者
- 鳥原 隆志 [著]
- 出版社
- 日本能率協会マネジメントセンター
- ジャンル
- 社会科学/経営
- ISBN
- 9784800590916
- 発売日
- 2023/03/29
- 価格
- 1,815円(税込)
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【上司のトリセツ】トラブルが起きたとき、部下はどう対処するのが正解なのか?
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
人によっては家族より長い時間を過ごす相手でもあるだけに、上司との関係はとても重要。とはいえ、なかなかうまくいかないものでもあるのではないでしょうか。
『インバスケット&ケースのストーリーで体験する 上司との悩みを成長に変える賢い方法』(鳥原隆志 著、日本能率協会マネジメントセンター)の著者も、過去には上司との関係について悩んだ経験をお持ちのようです。
著者自身はどちらかというと素晴らしい部下ではありませんでした。よく上司とは喧嘩をし、時には仕事に行きたくないほど上司との関係が悪くなったこともありました。
しかし、「インバスケット」というツールを通じ、今まで2万名以上の管理職の方の教育を担当してきました。上司という生き物を誰よりも熟知しているつもりです。
その経験から、上司という生き物をどのように扱うべきかを、皆さんにお伝えしていきます。(「はじめに」より)
インバスケットとは、制限された時間内に主人公の立場になりきり、お客様からのクレームや部下からの相談など、どの職場でも起こりうるような案件を的確かつ迅速に、精度高く処理を行うことができるかを測るシミュレーション演習だそう。
本書はまずあなたにストーリーの主人公になりきってもらい、様々な上司と接するケースに対し、今のあなたならどのように対応するかを考えていただく設定になっています。
その後に解説を読んで今までのあなたがとっていた選択肢と別の選択肢があることに気付いてほしいのです。(「はじめに」より)
また、本書を読んで気づいたことを、実際の現場で行動に変えてほしいのだともいいます。きょうは第2章「どの上司でも使える裏技20選」のなかから、「トラブル未遂事件発生」をピックアップしてみることにしましょう。
トラブル未遂事件発生、さあどうする?
ここで紹介されているのは、「出店企画課の山村課長から、販売促進課の溜池部長に以下のようなメールが届いたケース」です。
溜池部長へ
今回は少々驚きました。
千葉の千代田店新規オープンの資材がオープン3日前になっても到着しないので確認しましたが、九州の千代鶴店に行ってしまっているとは思いませんでした。
でも今回は何とか間に合いほっとしました。
まあ、溜池さんの頑張りもあり、ことなきを得たことをお伝えします。
対応感謝します。
次回からはよろしくお願いします。
(70ページより)
さて、こうした連絡があった場合、次のA〜Cのどの行動を選ぶでしょうか?
A/今回の件をヒヤリハットとして自身の反省と改善点とする。
B/山村課長に直接謝罪にいき深くお詫びと再発防止を約束する。
C/課長に報告し山村課長のところへ一緒に謝罪に行く。
(71ページより)
著者によれば、上司との関係をよくするならCだそうです。(70ページより)
POINT【根回し力】根回し上手は仕事上手
仕事にトラブルや問題はつきもの。問題を抱えていない人など存在しないといっても過言ではありませんが、周囲や上司に迷惑をかけたくないとの思いから、つい自分でなんとかしようとがんばってしまいがち。
「上司にいらぬ心配をかけたくない」というやさしい気持ちを持つ方もいらっしゃるでしょうが、そのやさしさがときには仇になってしまうということにもなるそう。このケースを通じて、そのことに気づいてほしいのだと著者はいいます。
上司に迷惑をかけたくないという思いは、とても大事で尊重すべきもの。しかしトラブルが大きくなり、結果的にどうしようもなくなってから報告を入れたとしたら、上司は驚き戸惑ってしまうはず。
そこで上記の例において、上司が困らず、同時に自分自身の信用を落とさないためには、上司である課長に報告をし、該当部署にお詫びを上長と一緒にするのが上手な仕事の進め方だというのです。
この先、少しでも障害が発生するケースがあるのであれば、その根を摘んでおくというのが上司との関係性を上手に保つ人の行動特徴なのです。
この行動をインバスケットでは「根回し」と呼び、計画組織力として評価します。
根回しの方法は、とても簡単です。
“報連相”をこまめに行うこと。ただそれだけです。
(70ページより)
ポイントは、ネガティブな報告ほど早く細かく念のために行うべきだということ。
もちろん、失敗したり、もしくは揉めそうな火種などは、積極的に報告したくはないでしょう。しかし、報告は早ければ早いに越したことはないもの。時間が経ってからの報告は、たとえ同じ内容であったとしても、ことを深刻化させてしまう可能性があるからです。
だからこそ、こういうケースの場合は“大丈夫かもしれないけれど、念のために報連相しておく”と考えることが大切。早めに“報連相”という緩衝材を入れておけば、衝撃は和らぐということです。(72ページより)
行動を変えると、必ず上司の反応は変わるものだと著者はいいます。それがすべての変化のスタートなのだとも。上司との関係をよりよいものにするために、参考にしてみる価値はありそうです。
Source: 日本能率協会マネジメントセンター