こんな叱り方はNG、Z世代の部下を持つ人へ送る「教え方のキホン」

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新しい教え方の教科書

『新しい教え方の教科書』

著者
北宏志 [著]
出版社
ぱる出版
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784827214185
発売日
2023/10/24
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

こんな叱り方はNG、Z世代の部下を持つ人へ送る「教え方のキホン」

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

マネージャーの多くは、研修を通じて会社のルール、評価の仕方、ハラスメントへの対応などを学んだ経験をお持ちであるはず。

しかし『新しい教え方の教科書 Z世代の部下を持ったら読む本』(北 宏志 著、ぱる出版)の著者は、多くの日本企業で教えているのはマネジメントの方法であって、指導・教育の方法ではないと指摘しています。

しかも、そうした状況下で突然マネージャーになった場合、自分が上司からされてきたことを参考にしながら“指導”することになるのではないでしょうか?

経験を活かすのは、ある意味で当然のことかもしれません。とはいえ会社からいわれることが絶対だった時代ならまだしも、令和を生きる部下たちにかつてのやり方は通用しないと考えるべきでしょう。

管理と指導は違います。そして指導方法は学ばなければ、身に付きません。

多様性社会が叫ばれる現代は、かつてのように画一的な管理方法では立ち行かなくなっています。今、改めて、適切な指導方法を身に付けましょう。(「はじめに」より)

こう提案する著者は、Z世代の若手社員研修を中心に、年間130回以上の研修・講演に登壇するという人材育成コンサルタント。大学卒業後、中高一貫校で6年間にわたり社会科教諭として勤めていたという、コンサルタントには珍しい経歴をお持ちでもあります。ちなみに当時の生徒たちはいま20代後半〜30代に差しかかっており、一部の教え子はすでにZ世代の部下を持っているのだとか。

つまり本書では、マネージャーと若手との間に立っている立場から、Z世代とのコミュニケーションのノウハウを明らかにしているわけです。きょうはSTUDY 3「これさえ知っていれば怖いものなし。令和式教え方のキホン」のなかから、2つを抜き出してみることにしましょう。

3つまでに絞り、簡潔に伝える

いうまでもなく指示出しは、指導・教育の始点。しかし多くのマネージャーは、自分がどう指示を出しているのか「あまり考えていない」ことが多いのだそうです。そこで著者はここで、自身が考える“指示出しのコツ”を明かしています。

とはいえ、「最初に伝えることを3つまでにし、簡潔に伝える」といういたってシンプルなこと。そして、このことを、クライアントに提案する企画書をつくる際の指示出しを例に挙げて説明しています。

「明日は10時にA社訪問か。企画書がいるなぁ。あそこは派手な企画が好きだから、ぱっと目を引くようなやつを頼むよ。たしか、前はホールを貸し切ってのイベントが好評だったような気がするなぁ。あと、ライバルのB社の後追いは嫌がるから気を付けて。そうそう、明日先方は3人だと思うよ」(75ページより)

著者によればこの指示出しの問題点は、「企画書をつくり、持参するためにプリントアウトをする」ということを一度も明確にしていない点。

もちろんベテランであればこうした指示でも“察する”ことができるでしょうが、若手社員にそこまでの理解力はないわけです。そのため、著者なら次のようにするそうです。

「明日A社に提案する企画書をつくってほしい。〇〇ホールを使う、500名程度の大型企画にしてください。先方3名分の資料をあらかじめ印刷し、製本するところまでお願いします」(75ページより)

なるほどここでは、やってほしいことと、そのゴールが明確化されています。こうした指示出しであれば、Z世代の若者たちも「なにをすべきなのか」「なにが求められているのか」を理解することができるわけです。

なお、「最初に伝えるのは3つまで」としているのは、それが適切に意識、理解できる範囲だから。一度にたくさんのことをいわれたら誰でも混乱しますし、とりわけ経験の浅い若手世代には大きな負担になってしまうわけです。

また、経験の少ない業務であればあるほど、小さな成果を積み重ねることがやる気につながっていくもの。そこで業務のゴールを想像しやすいように、マネジメント層側が意識的にコントロールすることが重要なのです。(74ページより)

叱るときにつくっておくべきシナリオとは?

Z世代の若者たちに指導・教育をするうえで避けて通れないのが「叱り方」。

改めていうまでもなく、絶対に避けるべきは、感情に任せて怒鳴りつけたりすること。そもそもそれは「叱っている」のではなく、ただ「怒っている」にすぎません。また同じように、人格を否定するような発言をしたり、過去を持ち出して、いま目の前にあることがらとは別のことについてまで叱ったりするようなこともNG

叱ることの目的は、相手に気付きを与え、修正をさせること。

だからこそ、相手にきちんとその意図が伝わる叱り方をしなければいけません。(95ページより)

ところが困ったことに、人を叱らなければならないタイミングは往々にして突然やってくるものでもあります。そのためつい、考えるよりも先に伝えたくなってしまうわけです。しかし、それではうまくいかなくなって当然。そこで著者はあえて、叱るときこそ前もってシナリオをつくるようにしているのだそうです。

たしかにそうすれば、いったん冷静になることができるでしょう。また、相手に「叱っている理由」をきちんと理解してもらい、今回の行動を修正し、次の行動につなげさせるためにも大きなメリットがありそうです。

では、どのようなシナリオをつくればよいのでしょうか?

「目的・行動否定・解決策を一緒に考える」シナリオです。(中略)Z世代に対しては何をおいてもまず、目的を明確に伝えることが大切です。(96ページより)

そして叱るポイントとなる「行動否定」についても、あらかじめ要点をまとめておくべき。「どんな行動が問題だったのか」「この行動にはどんなリスクがあるのか」といった項目を確認し、簡潔に伝えられるように準備をするわけです。

また、解決策を一緒に考えるシナリオも不可欠。ただ叱るだけではなにも響かないので、「次に同じようなことが起きた場合、どう考え、どうすべきなのか」をともに模索し、その時々での答えを出すことが「叱ることのゴール」であることを明確にすることが重要だという考え方です。(95ページより)

著者は本書のことを、「令和時代の『教え方』を伝授する書籍」だと表現しています。

ただし、理論や難しい概念はなく、すぐに取り入れることのできるシンプルで具体的なメソッドばかり。なかなかうまくいかないZ世代とのコミュニケーションを円滑にするために、参考にしてみてはいかがでしょうか?

Source: ぱる出版

メディアジーン lifehacker
2023年11月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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