幸せに働いていないとき、キャリア迷子になったとき「自分に問いかけたい質問」

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幸せに働くための30の習慣

『幸せに働くための30の習慣』

著者
前野隆司 [著]
出版社
ぱる出版
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784827214246
発売日
2023/12/22
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

幸せに働いていないとき、キャリア迷子になったとき「自分に問いかけたい質問」

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

幸せに働くための30の習慣』(前野隆司 著、ぱる出版)は、「幸せ」に関して厳選された30項目を掲載した書籍。著者は慶応義塾大学大学院教授兼ウェルビーイングリサーチセンター長であり、2024年4月からは新設される武蔵野大学ウェルビーイング学部長も兼任されるそう。つまりは、長きにわたり幸せの研究に携わっておられるわけです。

ちなみにご存知の方も多いでしょうが、ウェルビーイングとは、幸せ、健康、心と体と社会のよい状態という意味。日本では近年、「幸せ」という意味で使われることも多いようです。

幸せの研究は、1980年代から世界中の心理学者によって行われてきました。その結果、どんな人が幸せなのかがかなり詳細までわかっています。

私の研究結果でいうと、「やってみよう」「ありがとう」「なんとかなる」「ありのままに」(幸せの4つの因子)の強い人が幸せな人です。(「はじめに」より)

また、幸せな従業員は、創造性が高く、生産性が高く、欠勤率が低く、離職率が低いこともわかっているのだといいます。社員が幸せな会社では、利益が多く、会社価値が高く、株価が高いという研究結果もあるのだとか。

つまり現代社会においては、幸せな人の条件も、幸せの効用も、かなり解明されているわけです。いいかえれば、「健康に気をつける(気を配る)」ように、「幸せに気をつける(気を配る)」べき時代が訪れつつあるということ。

加えて、企業で行われているさまざまな施策(健康経営、働き方改革、人的資本経営、従業員満足度、従業員エンゲージメント、ダイバーシティ&インクルージョンなど)はすべて、従業員の幸福度が向上すれば解決するそう。

そこで本書では、さまざまな状況においての「幸せのコツ」をまとめているわけです。きょうは第2章「幸せに働くために個人ができる10の習慣」のなかから、重要なひとつのポイントをピックアップしてみたいと思います。

「なぜこの仕事がしたかったんだっけ?」と問いなおす

幸せに働くうえで、とても重要なのが主体性。

逆にいえば、人からいわれたとおりに働く「やらされ仕事」をしている状態は、あまり幸せだとはいえないわけです。そこで、もし目の前のノルマや数字、与えられた仕事に追われてつらくなっているのであれば、初心に立ち返りましょうと著者は提案しています。

振り返ってみれば多くの人は、就職する際に「こういう仕事がしたい」という意思を大なり小なり持っていたはず。ところが実際に仕事を始めると、「こんなはずではなかった」と思わずにいられないようなことにも直面するものです。

そんな時こそ初心を思い出しましょう。

私の場合、新卒でメーカーに入社しエンジニアになったのは、世の中を良くしたいからであり、やりたくないと思っている仕事も世の中を良くするための一部。そう考えれば、全ては大切な仕事であり、決してつまらない仕事ではないのです。(73ページより)

端的にいえば、捉え方が重要な意味を持つということ。

たとえば、「主体的になれるのは、企画系やクリエイティブ系など、創造性を発揮する仕事をしている人だけだろう」と主張する人もいるかもしれませんが、それは間違い。

創造性が求められる仕事や、人がうらやむような仕事をしていたとしても、自分がそれをつまらないと思えば、途端につまらなくなってしまうからです。(72ページより)

主体性の第一歩は、目の前の仕事の「ときめき」を探すこと

「主体性を持つ」ということは、働き始めるよりもっと前から始まっているのだと著者は主張しています。

学生時代から「何をやるか」を選んできた先に進学先や就職先があり、その結果として今があるわけですから、人生をかけて一つ一つの選択と真摯に向き合っていれば、今の自分はやりたいことをやっているはず。

厳しい言い方をすると、そうなっていないということは、それまでの人生の本気度が足りなかったともいえます。(77ページより)

ただし日本社会には、主体性を持たず、エスカレーターのように人生を進めることができてしまう側面も少なからずあるもの。だとすれば、そのような社会のなかで主体性を持つためにはどうしたらよいのでしょうか?

著者によれば、そのための第一歩は、自分がワクワクするものに着目すること。社会人になったとき、いまの会社に入ったとき、いまの仕事を始めたとき、それぞれのタイミングでなににワクワクしたのか? その点を考えなおしてみると、“自分の心が躍るポイント”が見えてくるかもしれないというのです。

もちろんそれは、日々の仕事に関してもあてはまるでしょう。やっていて楽しかったり、やりがいが持てそうだったり、少なくとも苦にならなかったりする業務に目を向けてみるーー。そんな姿勢が、主体性を持つことにつながっていくということです。

また、以下のような提案も参考になりそうです。

仕事をゲーム化するのも、気楽に取り組めるいい方法だと思います。

「この仕事は何分で終わるか」など、自分の中で競争にしてしまう。「目標タイムを達成したらおやつを食べよう」といったご褒美を用意するのも、誰でも簡単にできることとしておすすめです。そのような工夫をしながら自分が楽しめる働き方を模索することは、主体的なアプローチでもあります。

慣れてきたら、なぜその働き方が楽しいのかを考え、自分のワクワクするポイントを探してみてください。(78ページより)

もちろん望んでいた会社に入ることができず、「仕方なくいまの会社に入った」という方もいらっしゃるかもしれません。しかしそれでも、いまから、いまある環境のなかで主体的にキャリアを選んでいくことは充分に可能なのではないでしょうか?

まずは目の前の仕事に向き合い、「自分が主体的に働けるのはどんな仕事だろう」と考えてみましょう。その上で転職なり独立なり、自分の意思で次の仕事や会社を選べばいいのです。(78ページより)

また、しっかりと考え抜いた結果、「いまの会社でもう少しがんばってみよう」という結論に達する可能性もあるはず。いずれにしても主体性を持っていれば、可能性はさまざまな方向に広がっていくものであるわけです。(76ページより)

本書に掲載された30種の「やるといいこと」を、ひとつでもいいので習慣化してほしいと著者は記しています。なぜならそれが継続できれば、幸せな状態になることができるはずだから。この年末を利用して本書を確認し、ご自分にとっての幸せのありかたを再認識してみるのもいいかもしれません。

Source: ぱる出版

メディアジーン lifehacker
2023年12月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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